ドント

グレンとグレンダのドントのレビュー・感想・評価

グレンとグレンダ(1953年製作の映画)
-
 1953年。エド・ウッドが監督脚本主演を務めた、「服装倒錯者」の男性の物語。女装をして逮捕された男が自殺したことに悩んだ刑事が精神科医の元へ赴き、グレンという男性のエピソードを聞くことがメインとなる。
 まず字幕の「服装倒錯者(Transvestite)」とは、当時ある種の病気として扱われていたためにこう訳されているのであり現代だとあまりよろしい単語ではなく、今ならば「異性装(crossdressing)」と呼ぶのがベターかも、と書いておきたい。詳しくはお調べいただきたい。
 そんなわけでこのような、当時はある種センセーショナルでショッキングなテーマであったろうにも関わらず、元々は性転換手術を主題にしようとしたらしいし、さらに古い映画故に間違いや「どうかなぁ」と思う表現も散見されるものの、エド・ウッドがグレン(異性装時はグレンダとなる)を語る手つきはかなり丁寧であるように思う。
 特に当事者の異性装への愛、それと同時に社会からどんな目で見られるだろう! と恐怖する描写などはかなり迫力があり、幻影の一般人から文字通りに「指をさされる」シーンなどはかなり忌まわしいものを感じてホラーじみている。悪魔も出るし。さらに精神科医が刑事にレクチャーするなどお勉強映画としての側面もあり、お姉さんがちょっと脱いだりするセクシー映画でもある。加えて「異性装」にもいろんな人がいて簡単に割り切れるものではない、と語るあたり、社会派の趣もある。
 意識が高かったり低かったりとたいへんに盛りだくさんな作品であるのだが、これがまったく面白くねぇんだな! こんだけ多面的でありながら75分が長い長い! それもこれも場面の繋ぎとか話の繋がりとか演出とか説明ナレーションとかベラ・ルゴシの説教とかそういうのが軒並みスットコドッコイなせいで「なんでこれがこうなるんだろう……?」と65分くらい首を傾げて観なきゃいけないんだから困るんですよ。
 なんて書いてはみたものの、こういう映画を70年前に撮った男の愛や熱意や気持ちに心打たれる部分もあって、クソ映画と断ずることができない心境が残るのであった。そう、異性装者が簡単には割り切れぬ複雑ないち「人間」であるように、本作も簡単には割り切れぬ複雑な作品なのである……
ドント

ドント