ちろる

わが恋せし乙女のちろるのレビュー・感想・評価

わが恋せし乙女(1946年製作の映画)
3.8
白いワンピースに包まれて突然お家にやってきた赤子が、戦争で家を離れていた隙に見目麗しい乙女になった。
愛する妹、そうは思っても血の繋がらない美しい乙女を今までとは違う目でしか見られなくて、彼女が自分のものになるのなら苦しかった戦争の痛みを癒すことが出来るのにと高鳴る心。
そうとは知らずにお兄ちゃん、お兄ちゃんと慕って来る乙女の罪深き無邪気さとの歪みが見ているだけでズキズキと痛い。

愛する人が申し分ない優しい人に愛されてくれるならそれでいいじゃないか。
愛する人の幸せは己の幸せ。
そう言い聞かせても埋められぬ喪失感がフワフワと浮遊して、破れた心の傷は戦争の時の苦しみくらい、いやそれ以上に深くなってしまう。
登場人物みんなやさしいから心は清らかになるのに切なくて、遣る瀬無い。
静かな静かな愛の物語がここにあり。
ちろる

ちろる