えびちゃん

さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌のえびちゃんのレビュー・感想・評価

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本作に糸井重里がつけたコピーは「しみじみしましょう」なんだと。
冒頭の1969年のドラッグレースのMVはサイケでイケてて高まった。さくらももこ色に着彩されたはらいそも最高にときめいた。ちょうど小坂忠さんの訃報を受けて落ち込んでいたので細野さんや大瀧詠一さん界隈の音楽が聴けて本当に良かった。肉体は消えてしまっても心を揺らした音楽は残りつづけるから。
めんこい仔馬の歌を教えてくれた大石先生との優しい帰り道には堰切ったように涙が出たし、水族館に行くシーンも人魚姫のように美しいお姉さんが泡のように消えてしまうんじゃないかと不安になってずっと見つめていたまるちゃんのいじらしさに何度も何度も涙が出た。かと思えばいかにもまる子的なしょうもないシュールな笑いでしっかり落としてきたり。

でもどうしても手放しで感動できなかった。
求婚されて北海道に着いてきてほしいと言われるお姉さん。
「東京で絵の勉強がしたい。」「いろんな人に自分の絵を見てもらいたい!」と言っているのに、彼氏は「自分ではなく夢を優先するのか」と…。追い討ちをかけるようにまるちゃんも「絵は北海道でも描ける、お兄さんは一人しかいない。」と…。
このシーンからスッと心が冷めてしまった。
わたしたちは、こうやって翼をもがれて、足を縛られて、夢を軽んじられて捨てさせられてきたんだよ、ずっと。
まる子やさくらももこさんのことをあまり知らないというのもある。が、戦争と結婚を重ねていながら「幸せになってね。」っていうのも理解できず。 楽しいことならいっぱい、夢見ることならめいっぱい、じゃないのかよ。1992年公開で、1970年代を描いているのでややこしくて今とジェンダー感覚が違うのもわかる。でも心がついていけなかった。わたしには「しみじみ」の意味がひとつも分からなかった。すごくもやもやしてる。
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