天豆てんまめ

オーケストラ!の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

オーケストラ!(2009年製作の映画)
4.3
今まで観てきた映画の中でも、映画の冒頭とラストの瞬間でこんなに落差がある映画はなかなか思い当たらない。

感動音楽映画なのかなって観始めたら、中盤(いや7割方)まではドタバタコメディでした😅

それが、ラストは涙が止まらない😭

30年前に大恥をかかされて降ろされた元指揮者。その怨念を抱えながら所属していたロシアの名門オーケストラ、ボリジョイ劇場の掃除夫をしているが、或る時、パリの大劇場からオファーのFAXを発見、それを盗んで自分でオーケストラを組んで復活を遂げようとする。ほぼ犯罪 笑

それから腐れ縁の親友(太っちょで味わい深い彼がもう最高で泣かせてくれる)から30年前裏切られたマネージャーまでも巻き込み、オファーを出したパリの事務所と直接交渉するけど騙す方も騙される方もみんな曲者ぞろい!笑

この主人公の彼の表情がずっと気難しいロシア人のイメージぴったりで苛々させられるけど、彼を支える妻の強く深い愛情が沁みる。

そして、この作品の大きな魅力は2つ。

それがあまりに突出しているので後半にスコアが1点くらい上がる!笑

1つはメラニー・ロラン!!

スターソリストの彼女は、30年前の名匠指揮者の記憶がありオファーを受けるのだけど、あまりに付け焼刃の団員に呆れ、彼の30年前の執着を聴いて降りると言い始めるが、、

その先の真相は詳しくはここでは話しませんが、ユダヤ系の人々の歴史の哀しみと残酷さを感じさせる怒涛の感動の渦へ巻き込まれていく。

それにしても、赤い口紅の映えるメラニー・ロランは美しく、そしてバイオリンの指捌きは猛烈に練習したのでしょうが、本当に凄い✨

そして、団員は本番直前まで好き勝手でリハーサルもできず、本番を迎えてしまい、そこに現在の本当のボリジョイ劇場主が乗り込んできて、絶体絶命の中、、、

まあストーリーはあり得ないっちゃ、あり得ないんですが 笑 ラストの演奏シーンが全てを吹き飛ばしてくれます。

もう、ラストの大観衆の中のチャイコフスキー協奏曲の演奏シーンは最初はどうなるのかというハラハラ感に満ちているが、彼女のバイオリンソロが始まると空気が変わっていく、団員たちも30年前のあの瞬間が思い出され、、、、

後はもう、圧倒的怒涛の演奏に全部脳味噌持ってかれて、滂沱の涙が止まりませんでした。指揮者の彼とソリストの彼女の表情の変化、真相にまつわる回想も織り交じり、バイオリンの音色が心に掻きむしられるように、そして各パートの力強い演奏が必要になって、ボルテージは極限まで高められていく。

ほんと、この心の底からぐわーと込み上げてくる感覚に、改めて音楽の力は凄いと思いました✨

クラシック音楽とは正直だいぶ遠ざかっていて、最近ほとんど聴くことはありません。でも、幼少時にはよく聴いてました。

私の母は元々、音大の声楽家でソプラニストを目指してました。

ただ、父と学生結婚して本格的は音楽の道を諦めました。卒業直前には当時の日テレ朝番組の歌のお姉さんに内定のオファーが来たそうですが、既に姉がお腹にいたので断って家庭に入ったそうです。

それからずっとピアノと歌の先生をしていました。10年後に私が生まれた頃、母がソプラノで高らかに歌うのを3歳頃の私が怖がって、母は歌うのを辞めたそうです(申し訳ない、、)よく覚えていないのですが、母の歌う時の真剣な表情と歌声があまりにいつもの母とあまりに違っていたからでしょう。

子供の頃は家でクラシック音楽が良く流れていて、チャイコフスキーも良く聴きました。私はピアノも5歳から16歳まで習ってましたが、大学時代にヒップホップにハマってダンスばっかり(笑)

大人になってからはクラシックからどんどん遠ざかって最近は全然。でも、この作品を観てまたクラシックのコンサートで生の感動を味わいたくなってきました。

それにしても、この作品のラストに畳みかける圧巻の演奏シーンに今、強烈な余韻に浸っています。ここ最近に無いくらい。。

この映画もクライマックスの演奏シーンはきっとこれから人生で何ども観ることになるでしょう。

音楽の力は本当に凄い‼️

それを思い出させてくれたこの映画に感謝‼️