Omizu

セラフィーヌの庭のOmizuのレビュー・感想・評価

セラフィーヌの庭(2008年製作の映画)
5.0
【第34回セザール賞 作品賞他全7部門受賞】
実在の女性画家セラフィーヌ・ルイを描いた作品。セザール賞ではパルムドール受賞作『パリ20区、僕たちのクラス』を下し作品賞など最多7部門で受賞した。セラフィーヌを演じたヨランド・モローはフランス国内のみならず全米・LAの批評家賞を受賞するなど世界的に評価された。

これはすごい。正直舐めてた。アート系ミニシアター映画だと思っていたらとんでもない。終盤は辛くて哀しくて観ていられなかった。

浅学にしてセラフィーヌ・ルイという画家のことを知らなかった。家政婦として働きながら「神のお告げ」を得て絵を描き始めたところ、たまたまそこに滞在していた美術商に見出されるが…という話。

アーティストはどん底にいてこそ傑作を生み出せるのかもしれない。セラフィーヌの「私は虐げられ続けてきた。私があなたの汚れた下着を洗うからあなたは私より上なの?」という言葉が痛切に響いた。

セラフィーヌはそもそも何らかの障がいがあったのだろう。彼女のアートはいわゆる「アウトサイダーアート」になるだろう。

実際に絵を観てみると、美しいけどなんかぞわぞわくるものがある。この世の人が描いたものとは思えないというか。その意味では彼女を見出したヴィルヘルム・ウーデが収集したアンリ・ルソーやブラックとは明らかに異質。

またそのヴィルヘルムも「社会から疎外された存在」として描いているのもいい。彼はユダヤ人であり、性的マイノリティである。ただ、実際にそうであったのかどうかは調べてもよく分からなかった。

疎外された二人が社会の中心に行こうとした末の悲劇、それが本当に悲しかった。

ところどころテレビドラマのような雑な転換は気になったけど、それをカバーして余りあるのがヨランド・モローの演技!アカデミー賞を受賞しなかったのはおかしい、と思うほどの名演。いや、もうセラフィーヌそのものにしか見えないほど。

セラフィ―ヌの人生はいいものだったのか…でも戦前に亡くなって第二次世界大戦を見ずに済んだのは不幸中の幸いだったのかもしれないね。

想像以上に心に深く突き刺さる作品だった。人生ベスト級に衝撃的な傑作!
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