三四郎

ことの終わりの三四郎のレビュー・感想・評価

ことの終わり(1999年製作の映画)
2.5
小説家が最悪な奴だ。小説家に出会わなければ、奥さんも自分が「淋しい」のだと自覚しなかっただろう。夫が高級官僚の為、仕事ばかりで夜22時以降でないと帰ってこないということを恐らく奥さんは受け入れていたのに、小説家に出会ってしまったことにより、満たされぬ淋しい思いに気づいてしまった。しかしだからと言って不倫をするのはどうかと思うが、まぁそんなことを言い始めたら、この世から小説はなくなってしまうだろうし、古今東西の名作と呼ばれる物語も創られることはなかっただろう。

この映画はグレアム・グリーンの『情事の終り』を原作とし、しかも彼の実体験に基づいているというから、グレアム・グリーンって最低な奴だなと思ってしまった。
仕事一筋で真面目人間で、奥さんが小説家と不倫をしていることも実は知っていたが見て見ぬふりをしていた旦那さんの方がとても好ましい人物に思えた。これが育ちのいいイギリス紳士なのかしら。同情せずにはいられない。勲章がもらえることを奥さんに話すが、奥さんにはそんなことどうでもいいことで、「レディ」と呼ばれるようになることよりも、「愛情」が欲しかったのだろう。夫婦とは難しいものだ。

この映画は、奥さんが、空襲で死にかけた(一時心臓が止まり死んだ)小説家と別れたのち、誰か別の男と不倫をしているのではないだろうか…というミステリーから始まるが、それが誰でもなく、あの空襲の時に神様にお祈りし約束したことを忠実に守っていただけだというのが興味深かった。そして、この綺麗な奥さんは心優しい女性でもあった。こんなに心美しい女性なのに、ろくでもない嫉妬野郎の小説家をそれでも愛するなんて理解できない。
旦那さんが、病に侵され余命幾ばくも無い奥さんと小説家と3人で我が家で暮らそうと提案するところに、旦那さんの奥さんへの深い愛情を見た。自分も旦那さんの立場だったら、きっと同じことをするだろうと思った。奥さんの立場だと、早く離婚して小説家と二人だけで暮らし死んでいきたいのかもしれないけれど…。
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