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ジュリエットからの手紙のodyssのレビュー・感想・評価

ジュリエットからの手紙(2010年製作の映画)
3.0
【女性に都合のいい映画】

舞台がイタリアで、ちょっと旅行気分になれる映画だから、あんまり現実とリンクさせて論じてはいけないお話なんでしょうけど。

でも、これ、基本的に女性映画だから、女性に都合よく作ってあるんですよね。そこがわりに見えやすい。

かつてイタリアで一目ぼれした男がいたのに、しかし親の意向などもあって自分の意志を通すことができなかった英国女性が、50年後に昔の恋人を探すというメインストーリー。

その老婦人の手助けをしながら、しかしその話を記事にまとめることでライター志望への足がかりをつかもうとしている米国の若い女の子。フィアンセあり。というか、彼がイタリア料理店をNYで開こうとしているので、婚前旅行もイタリアになり、それがきっかけで老婦人に邂逅するという筋書きで、こちらがサブストーリー。

でも、どちらがメインでどちらがサブかは、実は微妙。特に若い観客は、米国の若い女の子に視点を合わせて見てるかも。

何にしてもネタバレになるから筋書きにはこれ以上触れませんが、二人ともハッピーエンドで良かったですよね。でも少し考えてみれば、こういう初期設定が必ずしもハッピーエンドに行き着かないだろうことは誰にでも分かるし、老婦人の孫である英国青年がそういう懐疑心を代表してくれている。しかしこの映画ではそうした懐疑心が丸め込まれるように筋書きができているのです。

よく考えてみれば、『ロミオとジュリエット』だって、ロミオは最初は他の女の子に夢中だったのが、舞踏会でジュリエットに会って恋をしちゃうんだから、ある意味、他愛ないわけですよね。そういう他愛なさも、この映画はしっかり見習っていると言えるのかもね。
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