【猫より街が面白い】
日本的な私小説、それを映画にしたって感じですか。猫が絡んでいるけど、趣味的な世界に籠もるのが現代私小説の世界なのかな。
私は別に猫好きでも何でもないので、種々登場する猫たちには「ふうん」というくらいの感慨しか湧きませんでしたけど。
むしろ、猫たちがたむろする広場だとか、すり抜けていく路地裏だとか、そういった街のたたずまいが面白かった。東京の下町って、道が狭くて大地震が来たら逃げ場もなくなりそうだけど(東京在住の皆様、脅すようですみません)、意外なところに意外なものがあったりして(この映画だと新鮮な水が飲める井戸だとか、おいしいコロッケを売っている肉屋だとか)、見ていて飽きませんね。
もう一つの舞台が古本屋なんだけれど、でもアルバイトしているヒロインに本のことで相談する男の子は、まあヒロインに近づくための口実であることは分かりますが、今どきだとインターネット上の古本屋で探すのが一般的じゃないかな、なんて思ってしまう。
あと、ああいう古本屋ってあんまり儲からないはずだし、バイトの女の子二人も雇う余裕あるのかなあ、なんて細かい心配というか穿鑿までしたくなってしまいます。
人間関係の描き方が、断片的ですね。最近の日本映画にはこういうのが多い。私小説と言いたくなると同時に、現代の人間関係が反映されているのかなとも思うけど、でもヒロインとリンゴを送ってくる青年との関係はやや不自然な気が。不自然だけならいいけど――猫じいさんだって不自然かもしれないし――、ありきたり、っていう印象があるんですよね。あそこは一工夫ほしい。