あっ怖い

異人たちとの夏のあっ怖いのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
4.2
ド怪作。期待通り最高だった。
寂れたオフィスビルの一室からの過剰にドラマチックなプロローグと、気持ちの良い活気を見せる夜の浅草から始まる幻のようなひと夏の体験。
『嬉しかった。街の灯りが煌めき、信号の色まで美しく見えた。』タクシーで酔の回った彼が嬉しそうに語るその姿、今は亡き両親と再会できた幸福に綻ぶ表情。片岡鶴太郎の人好きのする顔貌が大好きなんだよな。ひとたび両親の元を訪ねればすっかり子供のように甘えてその場に溶け込んでしまう英雄に独り身である寂しさを認める。決まってそんな場所に異人たちは舞い込んでくる。
終盤の怒涛の怪事にはこちらが声を失ってしまうほどのパワーがあるが、本作は実際には「ホラー映画として作って欲しい」と頼まれたそうなのだから驚きだ。こっちがメインになる予定だったのかと思うとまさに"どうかしている"と言わざるを得ない。
甘美な触れ合いと郷愁。どこか気楽で、泣かされた次の瞬間には狙ってか否か思わず噴き出してしまうようなシーンも。悲しい出来事の瞬間、頭上にはいつだって夕焼けの差し込むような情熱的で、かつ穏やかな色の光が存在しているようなのだ。盆は怪異を呼び寄せがちだが、一連の出来事がここまでひと夏に限定され、そして連れ出されることで前へ進むのもまた良い。
思い出した時にはいつだって温かな気分になれる。そんな気がするから大好き。