genarowlands

私の好きなモノすべてのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

私の好きなモノすべて(1993年製作の映画)
3.7
こちらはスロバキアのマルティン・シュリーク監督。21章の日常の断片と美しい風景の映像で構成されています。題名のついた各章の断片からストーリーを追っていきます。

失業中の男、元妻、恋人、息子、男の父親、母親、元妻の彼が登場。

ここでも男は作家志望。失業中なのは作家で今は仕事をもらっていないのかもしれません。イギリス人の恋人に帰国するから一緒に来てくれと言われても曖昧にします。

この男は優しいんだろうか、優柔不断なのか、ドライなのか、よくわからないシーンが時々表れます。

傷ついている人と傷つける人の間に入らず傍観者となってしまう。どちらにも寄り添うようで、かえって両者を傷つけている。

父が病んでいる母を傷つける。それも傍観者。

元妻が彼の恋人を傷つける。それも傍観者。

元妻と今彼の関係もうまくフォローしようとしない。

恋人が父親に誤解されても理由を説明して庇ってあげない。

息子がいちばん大切なのもわかるし、両親をそのままにしておけないのもわかるけれど。はっきり言葉にする時はとてもドライ。

息子はすべてを見通していて、自分がネックだとわかり、息子が解決しようとする。

男は何もしない。受け身のまま。愛は行動に現れるのに。後から抱きしめるだけ。

タイトルの「私」は誰なのかなと鑑賞後気になっていました。やはり失業中の男なんですね。

みんな大好き、選べない。迷いの中で過ごした恋人との輝くような時間は美しかったが、息子との男同士の時間もわるくない。でも三人でいられたら。男は人生ずっと迷っていた。誰の気持ちもわかるから。それを優しさだと勘違いして。

父親役は先に観たチェコの『スイートスイートビレッジ』のイジー・メンツェル監督でした。

映像はうっとりする美しさ、小さな笑いがちょこちょこ入っています。

主役の男性の生き方に共感できなかったのですが、映画の作り方のおもしろさや映像の美しさから、マルティン・シュリーク監督の他の作品も観てみたいと思いました。
genarowlands

genarowlands