ちろる

素晴らしき日曜日のちろるのレビュー・感想・評価

素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)
3.8
若き男女の多幸感溢れるデート物語、ではなくてお金がなくて、焼け野原も所々に残る東京の街で2人で過ごす時間にさえ戸惑う男女の姿が切なくさせる、こじんまりとした異色の黒澤作品。

戦後、持つものと、そして持たざる者の区分けがはっきりとなって、金持ちはより金持ちになる一方で職があってもかろうじてしか衣食住を整えられない大半の力なき若者たちにエールを送るような作品。
ポケットにあるのはたったの35円。
愛し合う2人が一週間ぶりに会えるデートでも行えることは限られてるのだが、どうにかこうにかポジティブに振る舞う彼女と、落ち込んではようやく奮い立たせ、また不甲斐ない自分に落ち込む彼氏の対比はまさしく男と女のステレオタイプの姿。
はじめは2人の関係性が微妙に見えたが、だんだんと2人のことが愛おしくなってくる、しかし世間はひたすら冷たい。
極貧デート、しかもなかなか遊ぶところも少ない瓦礫の残る街並みの中で知恵を絞りながらたどり着いた2人の妄想ゴッコ。
のんびりと彼らを見つめていた私を見透かしたように音楽堂のシーンで一気に鑑賞者を巻き込んでいくシーンはインパクトがあった。
このラストシーンは黒澤監督らしく雨風の音の挿入が素晴らしい。
この時代にしてすでに斬新、スタイリッシュなセリフが並ぶかなりエッジの効いた作品であることは間違いない。
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