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マリー・アントワネットのkunicoのレビュー・感想・評価

マリー・アントワネット(2006年製作の映画)
3.9
英仏周遊後再見シリーズ①

高校の時にクラスの女子でこれを観に行くのが流行ってて当時部活の休みに3人で映画館に行ったけどあの頃はちゃんと理解しきれてなかっただろうなと思うマリー・アントワネットの一生。

幼くして故郷を捨て同盟の為にひとりフランスに渡ったアントワネット。
そこで彼女を待っていたのはオーストリア人と陰で悪口を叩かれる冷遇と、男の子を産まなくては立場が危うくなるというとてつもないプレッシャーだった。
子供を授かれないわけではなく、旦那であるルイ16世から女として全く相手にされないという屈辱であり、それを母国にいる母親や兄からも咎められてしまうという苦痛。
今のご時世だと100000000%ハラスメントだけど、王子誕生は人生を賭けて成功させなければならないミッションだった。
そんな中描かれるリトルトリアノンでのアバンチュールは最もアントワネットが彼女らしく振る舞える時間だったのだと思う。
ギャンブルやショッピングに明け暮れる姿はどこか退廃的でもあり、彼女が精神的に限界を迎えているようにも見える。
本来だったらカウンセリングを受けさせるような状態だった気も。

カンヌのプレス試写では大ブーイング、アントワネット協会の会長も非難しているらしいが、ここで描かれる彼女の人物像には共感するし、あどけなさの残る少女が苦難とともに母親へと成長していく物語は同じ女性として面白く観れた。

ベルサイユで巨額の費用を投資して撮影されたという本作。
鏡の間と寝室が一部屋挟んですぐ隣という事実に現地で「ち、近すぎる...」と驚愕したけど、ベッド横の隠し扉があるならもっとちゃんと見ておけば良かった...。
宮殿からトリアノンまではかなり距離があって30分は歩いたと思う。
それでもアントワネットがあそこでの暮らしを熱望した理由は映画を観れば明確だったし、実際に訪れてみてその差は歴然だった。
穏やかに、そして健やかに我が子と過ごすに必要だったのは生活全般が全自動式でひたすらに優雅な宮殿ではなく、動物や植物と共に過ごす小さいながらも温かみのある空間だったのだろう。
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