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ナポレオンのkazu1961のレビュー・感想・評価

ナポレオン(1927年製作の映画)
4.0
▪️Title : 「ナポレオン(1927/1981年修復版)」
Original Title :「Napoleon」
▪️First Release Year:1927
▪️JP Release Date :1966/12/10
▪️Production Country: フランス
🏆Main Awards :※※※
▪️Appreciation Record :2020-482 再鑑賞
🕰Running Time:240分
▪️My Review
圧巻!!1927年にこのスケールとは! ただただ驚くばかりです。
最長版が378分というアベル・ガンスの本作、主人公にふさわしいスケールのある伝記叙事詩です。雪合戦の先頭に立っていた少年時代(1780)から勝利をおさめたイタリア侵攻(1796)までが描かれていますが、アベル・ガンスはこれを6部作にする予定だったため(トーキーの台頭や予算の問題で実現されませんでした)、この16年間のストーリーだけではその内容に深みがないのが残念です。また、フランス革命前後の知識が多少でもなければ登場人物を把握するのにも苦労ですね^^;。
その一方、ガンスは革新性を重視する監督でした。その意味では、活力と想像力に溢れた本作はやはり卓越しています。刺激的なカメラワークが特徴で、セットの天井から吊るしたかめらをブランコのように揺らして「ラ・マルセイエーズ」の演奏シーンを撮影し、サイレントでありながら革命歌から湧き上がった興奮が伝わってくるかのようです。そして、最大の功績は、ラスト20分で表現される3台の映写機を使った「ポリビジョン」と呼ばれる3面スクリーン方式の上映方法を実現したことです。これは大スクリーンで観てみたいですね。そのほか躍動感と様々なアイディアに溢れています。カットバック、モンタージュといった映画には欠かせない手法が、すでにふんだんに使われていました。
元は長大な作品が、相当量カットされて当時上映されたらしく、散り散りになったフィルムは、ケヴィン・ブラウンローなの、数人の手によって再生されているそうです。
私は、本作をフランシス・F・コッポラ監修版で鑑賞しました。フランシス・F・コッポラが配給権を買いとり、半世紀ぶりに復活させたフルオーケストラ版です。父カーマイン・コッポラに作曲とフルオーケストラの指揮を依頼して作成した本作、その壮大なスケールと音楽が見事にマッチしています。日本公開版はコッポラの他、黒澤明も監修に当たっているそうです。
そして、ナポレオンを演じたアルベール・デュードネの演技は素晴らしいです。肖像画のナポレオンには似ていませんが、目の周りの深い隈や据わった目はナポレオンのイメージそのものという感じで、神経質なシャープな顔立ちは、ナポレオンに見えてくるほどです。
最後に議論のあるところですが、『つばさ』の時に、クララ・ボウの乳房が見えたのが史上初のヌードシーンとも言われています。本作でも、踊り子の乳房が一瞬見えるシーンがありました。共に1927年公開、フランスでは本作の方が映画史上初ということになるんでしょうね。

とにかく240分の作品です、観るのには気合いが必要ですよね(笑)

▪️Overview
「鉄路の白薔薇」(23)などで知られるフランスの巨匠アベル・ガンスが1927年に製作したサイレント超大作。当初ガンスはこの作品を第一部としてナポレオンの全生涯を描こうという厖大なプランを持っていたが、トーキーの出現、製作・上映に要する莫大な資金などの問題があり、この一作にとどまった。しかし、この作品は世界中で悲運に見舞われ、アメリカではMGMによって80分に短縮されて公開され、日本では昭和7年10月に東京・万世橋シネマ・パレスで17.5ミリ版によってひっそりと公開されるというありさまだった。こうして伝説の彼方に埋もれたこの作品に対して、世界中の映画人、映画研究家が再生を望み、現在、それらの人々の手によって再生された「ナポレオン」は数多くあるといわれている。そのうちのケヴィン・ブラウンロー版の「ナポレオン」を見たフランシス・コッポラが、クロード・ルルーシュから配給権を買いとり、自ら率いるゾエトロープ・スタジオで配給、父カーマイン・コッポラに作曲とフルオーケストラの指揮を依頼し、1981年、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールで公開した。この時から全世界に「ナポレオン」ブームが広がり、今回、日本で公開されたのも、このコッポラ版である。特に後半20分間の《トリプル・エクラン》はシネラマを先取りしたものとして話題を呼んた。スタッフは、監督・脚本のアベル・ガンスほか、撮影はジュール・クリュージェ、J・マンドヴィレ、レオンス・H・ビュレル、ロジェ・ユベール、美術はアレクサンドル・ブノワ、シルドクネヒト、ジャクティーが担当。出演は、ナポレオンにアルベール・デュードネが扮するほか、共演はジナ・マネス、アレクサンドル・クービッキー、劇作家アントナン・アルトー、アベル・ガンス自身もサン・ジュストに扮している。なお、日本公開版はコッポラの他、黒澤明が監修に当たっている。日本版字幕は戸田奈津子。白黒、スタンダード(一部、トリプル・エクラン)。(参考:映画. com)
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