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ヴァンドーム広場のukigumo09のレビュー・感想・評価

ヴァンドーム広場(1998年製作の映画)
3.5
1998年のニコール・ガルシア監督作品。彼女はパリのコンセルヴァトワールで演技を学び、舞台やTVドラマに出演し経験を積む。エチエンヌ・ペリエ監督『Des garçons et des filles(1968)』で映画デビュー。ベルトラン・タヴェルニエ、アラン・レネ、フィリップ・ド・ブロカ、ジャック・リヴェットなどフランスを代表する監督たちの作品に参加する。日本公開作の中での彼女の代表的な作品はクロード・ルルーシュ監督『愛と哀しみのボレロ(1981)』だろう。1986年には短編作品を監督し、1989年『Un week-end sur deux』長編デビュー。本作『ヴァンドーム広場』は彼女にとって長編3作目の監督作品である。

タイトルのヴァンドーム広場とはパリ1区に位置し、ルイ14世の時代に作られた八角形の広場。歴史的建造物に囲まれ、高級宝石店やラグジュアリーなホテルが立ち並ぶ場所である。冒頭、記念柱の彫刻をアップで映し、ゆっくりパンするとヴァンドーム広場の夜景が姿を現す。映画は広場にある高級宝石店が舞台である。
本作の主人公は宝石店マリヴェールの社長夫人マリアンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)だ。豪華で何不自由なく生活しているイメージだが、彼女はアルコールに溺れていて入退院を繰り返していた。夫であるヴァンサン(ベルナール・フレッソン)は名のある宝石店を経営しているにもかかわらず、原石の入手ルートに盗品が絡んでいたことが発覚し窮地に立たされ、自動車事故を起こし自ら命を絶ってしまう。マリアンヌは夫が死の数日前に見せてくれたダイヤモンドの原石のことを思い出し、金庫から取り出す。かつてはやり手のディーラーだった彼女はルーペでじっくり見入り、その美しさに魅了され昔の勘を取り戻し、会社としてではなく個人的にかつての顧客に接触し始める。夫の死に疑問を持っていたマリエンヌは、現在のマリヴェール社のトップディーラーであるナタリー(マニュエル・セニエ)が関係していると考え、彼女を問い詰める。何も思い当たることはないと逃げられるが、ナタリーに今も付きまとう元恋人ジャン=ピエール(ジャン=ピエール・バクリ)と知り合い親しくなる。
マリヴェール社に勤める夫の弟エリック(フランソワ・ベルレアン)の妨害などもありマリアンヌのダイヤ取引はうまく進まない。彼女は自らアントワープに出向き旧知のダイヤモンド商ローゼン(ラズロ・サボ)に売り込もうとするが、ダイヤが盗品であると見抜かれ、ロシアのマフィアが追っているようなアブナイ代物であると知らされる。これを裏で仕切っているのがマリアンヌのかつての恋人バティスリ(ジャック・デュトロン)だという。マリアンヌはディーラー時代にバティスリから仕事で裏切られたことがきっかけで、ディーラーを辞め今でも深い傷を残し、アルコール依存になってしまっていた。
動揺しパリに帰って来たマリアンヌを待っていたのはジャン=ピエールだった。彼はマリアンヌに、ナタリーの今の恋人がバティスリであると告げる。過去の自分とナタリーを重ね合わせたマリアンヌはある決意をしてバティスリに会いに行くことにする。

本作では後半まで人物の関係性が分かりづらいのが難点だが、現在と過去が結びつくミステリー映画のような作りとなっていて謎を解くような面白さがある。この映画での宝石は金銭的な価値よりも美的な価値に比重を置いているので、犯罪映画ではなく恋愛映画として観ることができる。そしてなんといってもエレガントな世界を描いた作品ということでドヌーヴが身に着けている衣装や宝石類を眺めているだけで存分に楽しめるだろう。
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