半兵衛

東京五人男の半兵衛のレビュー・感想・評価

東京五人男(1945年製作の映画)
3.0
物語が楽しい面白いというより、登場人物たちの言動や映像を通して1945年という時代の空気や雰囲気を本物の廃墟の映像とともに堪能することができた。配給がどういう風にやっていたのか詳細に描いている邦画はこの作品ぐらいでは。ただ肝心のギャグやテンポがめちゃくちゃスローで今のお笑いに慣れていると弱冠タルくなるのに注意。

ちなみに古川緑波が食料を調達するため田舎の農村を訪ねるくだりがあるが、そこが現在の聖蹟桜ヶ丘だと知り驚く。だとすると舞台は京王線繋がりで砧周辺なのか。

前半乏しい配給やバラック小屋での生活など世知辛いドラマが描かれ戦後すぐの状況がいかに大変だったかを思い知らされるが、それが後半配給を牛耳り品物を闇市に横流しする悪党たちを退治して市民たちにわたるというファンタジーな展開になるのに唖然とする。でもそこには何とかこの状況から復興して普通の生活を取り戻したい一般人たちの切実な願いや希望が感じられて一笑に付すことはできない。

有名な五右衛門風呂で古川緑波が「お医者様でも、お風呂に入るときはみな裸」と歌う場面は、今までとは違う新しい自由の時代が来た喜びが感じられる。

冒頭の列車が動く場面や、後半の洪水で家が流される場面での円谷英二(当時はまだ公職追放されていなかった)の特撮も見所。
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