たく

ドン・カミロ頑張るのたくのレビュー・感想・評価

ドン・カミロ頑張る(1953年製作の映画)
3.6
政治的意見がかみ合わない司祭と市長のドタバタ騒動を描く、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督1953年作品。冒頭で「ご存じドン・カミロです」という自己紹介に始まり、彼が地元を追われて辺鄙な土地に遣わされた経緯をやけにサラっと説明するくだりで、もしかしてこれは続編なのか?と思ったらやっぱり同監督による「陽気なドン・カミロ」(1951年)の続編として撮られたんだね。主演のフェルナンデルの圧倒的な存在感が印象深かった。原題“Le Retour de Don Camillo”は「ドン・カミロの帰還」というストーリーに沿った意味で、なぜこの邦題を採用したのか不思議(たしかにカミロは頑張ってたけど)。

北イタリアの司祭のドン・カミロがどうやら前作において共産党員の市長であるピポーネと政治的な意見対立で揉めたことが原因で雪深い土地に飛ばされ、誰一人として信者が来ない寂しい教会で孤独にミサを行ってる。どうしても地元が恋しいカミロがこっそり帰ってきてしまい、町の洪水を防ぐ堤防建設を主張するピポーネと、土地を荒らされたくない地主との対立に巻き込まれながら、カミロとピポーネが互いの時計の正確さを張り合って時計の針をどんどん進めていくコメディ展開。カミロが地元民の人気に推されてついに帰ってくるところ(=原題)で、試合直後のプロボクサーを一発で仕留めるギャグに笑った。

カミロが雪にまみれながらキリスト像を背負って教会に運び込むシーンで、雪が泡でつくられたいかにも偽物なのがちょっと興覚め。これには「ドクトル・ジバゴ」の雪のシーンを思い出す。彼がこのキリスト像と心で会話しながら自分の進むべき道を探っていくなかで、ピポーネとの対立が加熱し、それが子どもたちにまで派生して喧嘩に発展するにいたって、ついに長雨から町が大洪水に見舞われるというカタストロフィが訪れる。最後はカミロの説教が住民の心に響き、ピポーネとも和解し、町の復興を予感させる希望に満ちた幕切れとなるんだけど、洪水シーンを見るとやっぱり東日本大震災を連想してしまう。そういえば洪水シーンの極め付けと言えばクラレンス・ブラウン監督の「雨ぞ降る」があった。
たく

たく