第二次大戦中、ドイツがフランスに侵攻したためパリを逃れたジャン・ルノワールがアメリカに渡って撮った第一作目。
アメリカ南部にある広大な沼地、そこにはワニ、毒ヘビ、豹などの野生動物がいて、足元はぬかるみだらけで一度入ると帰れない湿原地帯。
迷い込んだ愛犬を探しに魔の沼地へ入ったベンは、殺人容疑をかけられ行方不明になっているトムと出会う。
舟で沼地の奥へ入る場面が印象的で、モノクロで映し出される「水」がとにかく美しかった。
本物のワニや、実際に噛みついたように見えるヘビの迫力にゾッとした。
「神の夜に光る大きなイカダ、それを人々は地球と呼ぶ。この湿原も、もうひとつの星さ」
ロマンチックな台詞だが、沼地で独り生きるトムの孤独と諦めを感じた。罪人は村の集落で暮らし、無罪の男は独り沼地で暮らす。
村から見れば沼地は別世界。沼地から見れば村は外の世界。トムがいる場所は監獄のように思える。
悪を信じて善を疑う村人たち。疑えば傷付けて、信じれば繋がる心。
悪を懲らしめたって事でハッピーエンド。