菩薩

タンゴ ガルデルの亡命の菩薩のレビュー・感想・評価

タンゴ ガルデルの亡命(1985年製作の映画)
3.9
エリセの新作に「タンゴ ガルデル」ってワードが出て来たからいい加減観なければ封を切った。ただこれと言って共通点があるかと言うと…劇中劇があってそのラストがなんちゃらかんちゃらくらいなもので直接的な繋がりは別になさそう。とは言え二人ともスペイン語圏の軍事政権下で困難を経験し「スール」と名のつく映画を撮っており自身の経験を作品の中に大いに反映させている…なんて言う大胆なこじ付けをしながら精神的な繋がりを見出したりしたい。この作品自体は非常に重層的でそんなんが苦手な私は正直今どの話…?となりかけたが、ここで描かれるのはやはり祖国への郷愁と祖国を離れても尚色褪せないアイデンティティに対する矜持、そこにリヴェットやドゥミを思わせる鮮やかなパリ的エッセンスと南米文学的エッセンスとが注入されソラナス自身の強烈な作家性とアイデンティティが花開いている。ピアソラの音楽は言わずもがなとして映像面でも非常に充実しているのが開始早々に実感出来る、『スール/その先は…愛』の前段階として、希望に満ちたラストで清々しく幕が閉じられていく。
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