ちろる

戸田家の兄妹のちろるのレビュー・感想・評価

戸田家の兄妹(1941年製作の映画)
4.0
幸せの絶頂のような一族の団欒から急転直下。
一家の当主である父親が亡くなり、財産整理のために家を追われる母親と嫁入り前の末娘。
羨ましい限りの裕福な一族の優雅な写真撮影の風景からはとても想像できないような醜いなたらい回し合戦がリアルすぎて笑えない。
「東京物語」とも並べられるこちらの作品、こちらの方がより直接的で、オブラートが無い分だけある意味気持ちが良い。
ただ、兄弟多くてもこんな事になるなんて、たらい回しされるお母さんのこと思うと切なくて仕方ない。
親に迷惑かけてきたとしても本質が分かってる子供と、真面目ぶっててもっともらしい理由つけても損得勘定ばかりの子供、死ぬ前にお母さんの心に残るのはどっちなのかは歴然だよね。
人情深い古き良き日本の家族なんて嘘っぱち。
人間なんて、いい奴とか悪い奴とか括られるわけじゃなくて、ある程度皆自己中な生き物なんだなぁと少し虚しい気分にもさせられた。
そしてひと時も飽きさせないユニークな脚本の見事さには唸る小津節全開の家族劇でした。
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