ちーちゃん

ヴェニスの商人のちーちゃんのレビュー・感想・評価

ヴェニスの商人(2004年製作の映画)
4.0
屁理屈・理不尽の極み。
胸糞。最高にモヤモヤする。
書かれた当時としては喜劇(典型的な慈悲によるキリスト教の勝利)だけど、現代的価値観と著しく乖離していて、見てるとめちゃくちゃ複雑な気持ちになる。
それに加えてアル・パチーノの演技が余計に悲壮感を漂わせてる。あれだけ哀れに縮こまって、小さな存在に見えるアル見たことなくてすごく印象に残った。

シャイロックがアントーニオに執着する気持ちが痛いほど分かってしんどい。商売上がったりだわ、差別にも耐え忍ばないといけないわ、しかもそれに追い討ちをかけるように愛娘が異教徒なんかと駆け落ちして道楽極めてるなんて聞かされた日にゃあ…そりゃ恨みますわな。
極限まで純化された怨念にはいっそ清々しさすら感じる。思った以上に捨て身の精神で好き。
役者や演出によって違いが大きく出そう。
なにはともあれ、どう考えてもあの判決は屁理屈だー!財産没収より強制改宗がいちばん堪えるだろうな。アイデンティティ無くなるもん。

21世紀の現代において、時代的価値観のギャップにモヤモヤすることがこの作品を見る醍醐味で、それこそが今でも上演され続けている理由のひとつなんだろうな。
ちーちゃん

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