リー・マーヴィン演じる主人公が、カウボーイそのものの風情で登場するものの、製作されたのがアメリカン・ニューシネマ全盛の1970年だから、さっそうと活躍する場などある訳ない。
舞台は開拓時代の末期も末期。
牧場は会社経営になり、牧童たちも絶滅危惧種になりつつある。
これだけ登場人物たちが常に「カネがない」「カネがない」とつぶやいている西部劇も珍しい。
金物屋に転身する者、会社化した牧場に残る者、銀行強盗に身を落とす者…仲間たちはそれぞれの進路に進むが、主人公は身の置き所がない。
荒馬を乗りこなしても誰もほめてくれない。チンケなウエスタン・ショーに誘われるのみ。
かといって、堅気にもなれず、『明日に向かって撃て!』や『ワイルドバンチ』のような弾けた悪党にもなれない。実に中途半端な身の上。
頼みの綱の、愛する女(ジャンヌ・モロー)との暮らしさえもままならない。
これだけダメダメだとカッコ悪いはずなんだけど、マーヴィンがあの苦み走った表情と深いセリフ回しで演じると、実にしみじみと味わい深い”(西部)男たちの挽歌”になる。
最初っから最後まで夕景の中にいるかのようなたそがれた主人公が、親友(ジャック・パランス)のかたき討ちの為に最後のプライドを奮い立たせる様が切ない。