半兵衛

記憶の代償の半兵衛のレビュー・感想・評価

記憶の代償(1946年製作の映画)
3.5
記憶喪失になった男が自分の記憶を求めるうちに大金絡みの事件に巻き込まれるノワールだが、それにしては緊張感もあまりないし犯罪テイストは薄めだし、色々な登場人物が出て来て会話しているうちにいつの間にかボスのところに来て終わってしまうので呆気にとられてしまう。

それでも様々なシークエンスで起こる工夫されたドラマや、多大な情報量を簡潔な人物の動きとカメラワークでまとめるスマートな演出により飽きることなく見ていられる。特に重要な人物があらわれたときモップが直前に主人公の前で落ちたりと何気ない動作で印象付ける手腕が粋。あと偽占い師の部屋である人物に対する照明のあたり具合で胡散臭さを際立たせたり、精神病院を訪れた主人公の影が蛍光灯の光で分散して、ある扉に手を掛けた瞬間その分散した影がまとまるなど工夫された照明がスタイリッシュな印象をもたらす。

記憶をなくした主人公を演じるジョン・ホディアクの、アメリカンっぽくない顔立ち(中東系の人だとか)が自分のアイデンティティを失い周囲の人間から浮いているキャラとマッチして存在感を発揮している。

リチャード・コンテが良い人設定で登場して面食らうが、ラストでは期待どおりの仕事をしてくれる。

主人公に協力する刑事が飄々とした良い味を出していて、最後にはメタなジョークまで披露して余韻を残す。
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