【鞭の味】
自宅発掘DVD再見にて。
一時イタホラを追いかけて、マリオ・バーヴァも続けて見たものでしたが、本作はとにかく、カラー撮影の滋味に浸る映画ですね。撮影出身監督のスキルが、遺憾なく発揮されています。
色彩と陰影、濃ゆく艶やかなりバーヴァブレンド。
カジュアルなゴシック・ホラー体裁ですが、物語の方は、プロデューサーの意向を脚本家が無視し、さらにバーヴァ監督が脚本無視して突っ走ったらしい。
結果、びっくり優先の安売り展開となり、フーダニットなのが枷となり、ラストにシワ寄せ来てトンデモ話に着地します。…いや、着地してねーか。www
肝はサドマゾ。が、1963年当時、それを描くにはハードル高かった模様。監督以下、変名で臨んでいる。有名どころの役者が不在なのもそんなワケ?クリストファー・リーもブレイク前だしね。
サドマゾにも人生いろいろですが、本作では本能に溺れる、愛も信もないSMですね。プレイが愛情表現である人には、反発しか湧かないのでは?作り手がサドマゾを蔑んでいるように思えます。
この、肝のつくりで面白さがまるで変わったと思いますが、やっぱり時代を先走り過ぎたのかな?
リーさんのイケメンぶりには惚れます。サディストの設定だが、どこか人の良さが滲んでると思う。
ヒロインのダリア・ラヴィは黒髪美女だけど…なんか小粒で、演技もイマイチ大根さん。ここは“叩き甲斐”のある女優さんにして欲しかった。やっぱり、他にできる人が居なかったのかなあ?
…谷ナオミさんでよかったんじゃね?
イントロこそ緊迫感ありますが、ある人物が殺され、その犯人ダレ?そもそもホントに死んだの?…と第二幕に入った辺りで、展開が足踏みを始める。脅かしが単調で、はよ犯人明かせやと苛ついてしまう。
あの強烈な撮影力がなかったら、東京12チャン昼下がり放映のよくあるヤツ…に堕ちていたとおもう。
原題は“鞭と体”の意味らしいが、そのフェティッシュに掘り込んだらそれはそれで、面白かったことでしょう。でも仕上がりは、“鞭と気持ち”止まりではと感じました。
<2024.2.17記>