いろどり

キャラバンのいろどりのレビュー・感想・評価

キャラバン(1999年製作の映画)
4.2
中国の息のかかっていないネパール側の高地ヒマラヤに住むチベット人という文明から離れた民族の貴重な文化に触れることができた。出演者は俳優ではなくほとんど現地の人ということで、時代考証に関して西洋資本でも安心感がある。1人見たことのある女性がいると思ったら、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」でブラピと共演したドレッドヘアの女性だった。インド出身のチベット人とのこと。キリッとした目が素敵なオリエンタルビューティー。監督はこのときスタッフでもあったらしい。

お店で見かけるヒマラヤ岩塩。彼らはそれを麦と交換するためラクを引き連れ何十日もかけて村まで行く。その一行キャラバンの何たる迫力!ラクたちの出す土煙、断崖絶壁での怯えた目はオールロケの賜物。ラクたち怖かっただろうな~。
まさに生死の瀬戸際の行商、それがキャラバンなんだと知った。メイキングで本当に絶壁によじ登って撮影している姿を見てビックリ。

今作ではチベット仏教の自然観が色濃く出ていて面白かった。大事なイベントの日程はすべて占いが決める。占星術のようなものだったり、石ころを投げて動きで決めたり。日本でもサイコロやあみだくじはどうにもならない最終手段で使われることもあるけど、チベットではこれがご神託。優先順位の一番。占いで決めたキャラバンの出発日を嵐が来るからずらしたい若い次期長老と伝統を守りたい長老の対立は、世代間の価値観の違い。すんなりいかない世代交代はところ変われどどこでも同じだね。

邦題を原題のヒマラヤから変えたのはイメージしやすいからなのか。変更の必要性は感じない。写真家でもある監督の荘厳な映像をチベットの仏教音楽が包み込む。雰囲気バッチリ!ヒマラヤの大自然と一体になる民族の生命を感じられる見ごたえのある一作だった。
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