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潜水艦轟沈すのmhのレビュー・感想・評価

潜水艦轟沈す(1941年製作の映画)
5.0
ナチ党員である六名が広大なカナダを、地元住民を虐殺しながらドイツへの帰還を目指すというバチあたりロードムービー。
カナダ北東部・ハドソン湾に上陸したら乗ってきたUボートが撃沈されてしまいオープニングで邦題回収。以後は潜水艦一切出てこない。(潜水艦ものにハズレなしという地口を真に受けて邦題つけたのかな?)この映画ではUボート乗組員は全員、ナチ党員という扱いになっている。
親切なカナダ市民をやむを得ず殺しながら、(やむを得ずというあたりがポイント。やたらめったら殺すわけじゃないのがリアルでいいね)旅を続けているうちに、ひとりまたひとりと仲間は減っていく。
ドイツからの移民が共同生活しているコロニーに迷い込むくだりが良かった。総統みたいな演説をぶちかますも誰も乗ってこない。聞けば、ナチズムから逃れてきたひたち(おそらくコミュニスト)なのだった。仲間のひとりはかつての生業であったパン職人の腕と自我をそこで取り戻したが、出発の際に即決裁判で殺されてしまう。
ラストは「脱走四万キロ(1957)」のラストのアレンジヴァージョン。「脱走四万キロ」の主人公のモデル、フランツ・フォン・ヴェラ大尉は何度も脱走を繰り返し、ドイツ本国で英雄とされ、敵地カナダを踏破して中立国アメリカにたどり着く。あきらかにこれが下敷きだけど、この映画ではエンタメらしいツイストを加えてる。
英語版ウィキベディアによれば、中立を保っているアメリカに参戦をうながすという目的もあったようで、それでここまで面白いもの作っちゃうのが素晴らしい。
ダークヒーローものというか、アンチヒーローものというか、ここまで尖ったエンタメ戦争ものもそうそうない。
あらかた戦争映画は見ちゃった気でいたけど、とんでもなくすごいのがまだまだ埋もれてる。
面白すぎた。
mh

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