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乾いた人生のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

乾いた人生(1963年製作の映画)
4.0
【搾られても、殴られても前へ前へ】
「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されているシネマ・ノーヴォ映画『乾いた人生』を観た。グラシリアノ・ハーモスの同名小説の映画化なのだが、噂以上に壮絶な作品であった。

白飛びした荒野に木霊する、ハエのような警報のような不快な音。一家は、ひたすら荒野を歩く。子どもたちはぐったりとしている。大黒柱の男は、骨のようなものをしゃぶりポイっと捨てる。すると痩せこけた犬がそれを拾おうとする。母親は、突然目の前に留まる鳥を鷲掴みにして殺す。目の前の生に必死なことがよく分かる。やがて町へと辿り着くのだが、横暴な軍人が目を光らせている。父親は、吸い込まれるように博打を始めたり、かと思えば軍人に暴力を振るわれている。しかし、タイトルが物語る通り、この映画には救いはない。荒野さながらただ人生が広がっており、搾られても殴られても前へと歩くしかないのである。この観ている方の心も乾いてしまいそうな画の迫力に圧倒される。

そして、何よりも犬である。常に、息絶えそうに歩きぐったりしている犬の演技。終盤の暴力と対峙する際の、草むらに隠れる演技にはギョッとするものがある。シネマ・ノーヴォの作品では荒野やジャングルなど、自然が人間の本能やら人生を象徴させる役割を担っている印象が強い。その中でも『乾いた人生』は傑出した作品といえよう。確かに「死ぬまでに観たい映画」と呼ぶにふさわしい作品なのではないだろうか?
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