真鍋新一

幽霊暁に死すの真鍋新一のレビュー・感想・評価

幽霊暁に死す(1948年製作の映画)
4.0
マキノ家秘蔵のフィルムでしか現存していないという作品をようやく国立映画アーカイブで。噂通りの素晴らしい作品だった。

長谷川一夫が幽霊になった父親と、生きているその息子の二役で、基本時代劇の人なのであまり考えたことがなかったが、例えばドラキュラ伯爵なんかもやれるような、そういう人なんである。二枚目なんだから当然か。しっとりとしたセリフ回しが現世に未練を残した幽霊の役にピッタリで、真心の深さゆえに成仏できなかったその苦しみが伺えて涙を誘う。

轟夕起子は笑顔も100点、涙も100点。こういう突き抜けたオーラってあんまり日本の女優さんにはない感じ。普通、この手の一人二役モノだと、トリック撮影の手間を省くために、ケチくさいカメラワークが目立ってしまうものなのだが、この映画では遠慮なく同一フレーム、同一カットにバカバカと2人の長谷川一夫が出たり消えたりするのでそれを見ているだけでも面白い。画面の前後にいる長谷川一夫にそれぞれピントが動いたりするのはおそらく鏡を使っているのだろうが、アナログ特撮の真髄とも言うべき奇想天外さ。

田畑義夫が「山の人気者」を歌いながら「ユ〜レイヒ〜」と歌って勝手に震え上がる場面など、ギャグのキレも良い。後半で花菱アチャコが出てくると、その速射砲のような関西弁でゴリゴリと話を動かしていく。
真鍋新一

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