ドント

パーフェクトブルーのドントのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
4.6
 1998年。やべぇな。超すげぇな何だこれは。弩級のアニメ作品ではなかろうか。再見ながら初見時より圧倒された。アイドルを卒業して女優へと転身した未麻はハードな業界、ストーカーとおぼしき誰かによる架空のウェブ日記に消耗していき、ある時「アイドルとしての自分」を幻視する。そして起きる殺人、溶解していく現実と虚構。
 早逝したアニメーター/アニメ監督、今敏によるデビュー映画はアイドル、オタク、ストーカー、黎明期のネットなど時事性をふんだんに抱え込みつつ時代を軽々と越えて現代にも接続する作品だった。幻覚ー虚像ーアイドルー女優ードラマー現実 が串刺しにされ、はじめこそ「虚実入りまじる」であったものが境界が溶けて何がなんだかわからなくなってくる。出てくるツールは古いものばかりなのに、なんというか髄の部分はまるで古びない。2024年でも観てたら頭の後ろがジーンと痺れてきてアッ、ワッ、アーッと忘我の沼に引き込まれるのだから大変である。
 97年の東京の風景や女性の部屋の詳細さ、人体の動きなどはまったく驚異的であるものの、これ実写ではなくてアニメなのだ。つまりリアル(三次元)よりもよりニセモノ(二次元の絵)なのであって、しかし没入感、呑み込まれる感じは物凄い。つまり前述の 幻覚ー虚像ーアイドル… という串刺しの図式に「アニメ」という項目も加えた上で構築されているわけで、さらにその串の先は観ている側の「現実」まで突き刺さっているわけだ。頭の後ろがジーンと痺れてくるのも当然と言える。
 こういった志の高い、チョーすごい狙いに、演出とか作画とかそういうものがほぼ完璧に応じていてドえらい仕上がりになっている。アイドル時代の動きと日常の動きがシンクロする序盤からして完全にヤバい。編集がヤバい。手つきが実写の編集なのである。ヤバい。終盤の畳み方はごく僅かに「わかりやすい」が、これは瑕瑾であるだろう。いやマジでこれすごいッスね。昔観た時なんで感銘を受けなかったんだろう。アホだったのかな。それとも観た私の虚実がグチャグチャになって、そのままなのかな……?
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