小

パーフェクトブルーの小のネタバレレビュー・内容・結末

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

虚構と現実とか、入れ子構造とかについて、アレはこう、コレはこう、みたいな考察をしないとよくわからない映画は、面白そうと思うものの、考えだすと面倒くさくて苦手。わかったような気になっても、わかってない気がするし。

本作も観終わった後しばらくはそんな感じだったけど、考えていくうちにエンタメでありながら、人間の本質をしっかり描いているような気がしてきた。ヒロイン未麻の最後の一言のシーンは、自分には理想(虚構、欲望)と現実との対立に折り合いを付けた人の表情と言葉に思えてきたし。

ググっていくうちに、故・今敏監督の「1999年12月 アメリカから「パーフェクトブルー」に関するインタビュー (オマケ付き)」にたどり着いた。
(http://konstone.s-kon.net/modules/interview/index.php?content_id=10)

なーんだ、私が何となく引っかかっていたことが、ここに全部、はっきりと書いてあるじゃないですか。考えることが無くなってしまった…。(以下、引用は監督インタビューから)

<一言でいえば、本作は主人公・未麻の成長過程の、ある一部分を描いています。成長に伴う迷いと混沌が主なテーマです。成長のプロセスは、随分乱暴ないい方ですが次のようにいえると思います。破壊〜混沌〜建設。>

アイドルとしてそれなりに充実していた未麻が、大人の都合で女優に転身させられ、新しい環境で不安になる。(破壊)

「前は良かったなあ」という思い(監督によれば回帰願望)はファンの声などで強化され、周辺で起こる事件によってその思いに自分が振り回されているように感じ、混乱する。(混沌)

普通ならここでお医者さんに診てもらうところだけれど、自分の回帰願望が実体化したような状況と対峙することがセラピーとなり、現実の中で願望をコントロールするきっかけをつかむ。要するに大人への階段の一歩めを踏み出す感じですかね。(建設)

<映画の一番最後に登場する未麻は、再びなにがしかの安定を得た未麻>で、最後の一言を<ルームミラーに映った姿で言わせたのは、彼女にとっての終着点がこの物語の終わりではないことを暗示したかった>から。<「本物の私」というのは、一生見つかるかどうかも分からないものです。いや、そんなものはあるわけないんです。それは他者との関係性においてのみ語られるべきものであると思っています>。

尾崎豊に言わせれば「卒業していったい何解るというのか 想い出のほかに何が残るというのか」「あと何度自分自身 卒業すれば 本当の自分に たどりつけるだろう oh,oh」という、古今東西の先賢たちが繰り返し考え述べている永遠のテーマを背骨にしているところが、本作の好きな部分かな。
小