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宗方姉妹のleylaのレビュー・感想・評価

宗方姉妹(1950年製作の映画)
3.9
「むねかたきょうだい」と読みます。
小津さんが松竹ではなく、初めて新東宝で撮った作品。

当時、新聞で連載された大佛次郎の人気小説がベース。小津作品で原作があるのは珍しく、いつもとは少し違う展開。それでも、脚本・演出、構図はやっぱり小津節となっていて見応えありました。

夫婦仲がギクシャクする夫(山村聡)と妻・節子(田中絹代)。ある日、節子はかつてから好きだった田代(上原謙)と再会する。妻の田代への気持ちに気づいていた夫は、妻に冷たくあたる。姉夫婦と一緒に暮らす妹・満里子(高峰秀子)は、冷淡な夫と縁を切るよう節子にすすめるのだった…。

かつて姉が好きだったのは、フランス帰りで優しい男(上原謙)。女性なら誰もが、妹と同様にあんな夫(山村聡)とは別れなさいよ!と言うだろう。

古さと新しさ、両方の価値観の女性像を描いているのがテーマのひとつとなっている。

高峰秀子が天真爛漫な妹を演じる。ハツラツとしてコミカルなデコちゃんが可愛い。

山村聡が何を考えているかわからず不気味。それがこの作品の中で際立っていて、ラストに不気味さをひきずっていく。夫の妻への最大の復讐劇なのでは?と思える物語だった。

山村聡、静かな中にもすごい演技力を感じた。猫を可愛がる姿も怖いぐらい。恐らくエリートであった夫は仕事を失い、妻にも愛されずプライドがズタズタだったことだろう。一見、彼がすべて悪そうだけど、実は善人ぶっている妻が一番罪深い。

終戦後4〜5年という時代を考えると、成功者とそうでない者、新しい時代についていけず古い常識に囚われる者など、人によって生き方や考え方で明暗がありそう。

ただの夫婦のドラマに見えるけど、戦争の影が支配している悲劇なのかなとも思う。

これで小津さんのトーキー作品はほぼ全部観てしまったかも。もっと観たいな。悲しい…レビューを書いてない作品を再鑑賞かな。
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