この妙な起伏のなさやいちいちズレた会話は確信犯的にシュールなアートコメディを狙ってやってると思ってるのでこの時期のしんちゃん映画としては別格というか別枠。しんちゃん映画すべてひっくるめても似た映画が見当たらない異色作じゃないだろうか（ユメミーワールドが題材的に若干近いが作風は全然違う）
だってこんなタイトルで冒頭があんなだったらアクション映画展開になるって絶対に思うのに全然そうはならずにダラダラと公開当時の日本の風刺ネタと野原一家の生活風景ばっかりツッコミ無しで淡々とやるんだもの。ないでしょそんなしんちゃん映画。敵もなんだかわからないしストーリーもなんだかよくわからない。ラストを迎えても何がどう解決したかよくわからない。そもそもこれが現実だったのかもよくわからない、という…。
エッシャーの騙し絵やブラックのキュビスム絵画のイメージを援用したと思われる夜の世界の怪しさも面白く、なにがなんだかよくわからないが、そのわからなさに笑いが止まらなかったので、個人的には歴代しんちゃん映画の中でも上位に入る。っていうかこういう観客を置いてけぼりにするアナーキーさがクレしん映画の面白さだったんだよな、この頃ぐらいまでは。
