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さらば愛しき人よのドントのレビュー・感想・評価

さらば愛しき人よ(1987年製作の映画)
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 1987年。YouTubeを開くとやけにオススメされる、佐藤浩市の「チャカとだんびら」で皆さんご存知の動画(再生数1000万回突破)(マジかよ)の切り抜き元が本作。凄腕のヒットマンが仏心から殺しても殺さなくてもよい標的を見逃したことから、恋人や幼なじみを巻き込んでの危険な日々がはじまる。
「郷ひろみがヤクザのヒットマン役……? 監督が原田眞人か……」と危惧して観たものの、郷ひろみに関してはそりゃあヤクザには見えないのだが、色気を漂わせる撮り方をされているし、そもそもが米国情緒を漂わせたカッコイイ・ファンタジー・ヤクザ映画であるからして、これはこれでよかった。なお画像のようなバカデカいサングラスはかけない。
 ゾロゾロと揃う何気に凄いキャストもフワッとした空気をまとっていて、男衆はみんなしてイイ雰囲気を出している。フェロモンが出ている。女はあんまり綺麗に撮れていない。特にだんびらマン(いま名付けた)こと佐藤浩市、洋書を読むヒットマン嶋大輔、帽子の粋なヤクザ大地康雄、マスターの内藤陳あたりのキャラがビンビンに立っている。
 というかキャラクターに「深み」みたいなのがなく、なんか雰囲気のみでビンビンに存在している。ストーリーもなんか曖昧な気がする。ただそもそもが米国情緒を漂わせたカッコイイ(略)映画なので、言ってみれば表層だけのこのありようというのはいっそ好ましい、と思う。暴力シーンもほとんど「見せない」のがいま観てもとてもクールだし、なので「ガッツリ見せる」所が光る。逆に言うと、ベタつくドラマ部分はあまり要らなかったのではないか。
 で、原田眞人の監督ぶりは「超キマっているシーン」と「キメようとして厳しくなっているシーン」の落差が激しい。喫茶店の外で大原麗子がひとり語る長回しとか、郷ひろみと舎弟の木村一八が庭で隠れながら最後の会話をするシーンとか超いい。一方「郷ひろみがラジオに出演して滔々と語る」という大事な場面はロマンチックなんだけど、だけどさぁ、これは格好つけすぎですよ。ヤーッ恥ずかしい……ってなっちゃう。が、概してハマっているシーンの方が多いので、好印象の残る映画だった。
 あとこれは蛇足なんですが、あの、木村一八がねぇ……。2010年代で言うなら市原隼人というか……。こんな「後輩」がいたら夢のような日々だろうなと思わせる、この……よくなつく大型犬のような……。とか思ってたら大原麗子を「兄貴が取られるかと思って」って脅すし、郷ひろみからは「お前と夏、過ごしたことないな」って言われるし……もうLOVEじゃないですか……ねぇ……
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