空海花

美しき結婚の空海花のレビュー・感想・評価

美しき結婚(1981年製作の映画)
3.7
エリック・ロメールの連作シリーズ「喜劇と格言劇」第2弾。
製作は80年代のロメールの全作を手掛けたマルガレット・メネゴズ。
撮影は「飛行士の妻」に引き続き、ベルナール・リュティックで、当時としては珍しくフジカラーが使われて独特の色彩効果を出している。
同時録音による録音は「飛行士の妻」のジョルジュ・プラとジェラール・ルカで、通常のブーム・マイクに加えて新式のワイヤレスマイクが駆使された。
撮影は24時間耐久レースで有名なルマンを中心に行われた。
フランス・シネマ大賞受賞。

パリで美術史の勉強をしているサビーヌ(ベアトリス・ロマン)は画家で妻子持ちの愛人シモン(フェオドール・アトキーヌ)に嫌気がさし、愛人と別れ結婚を決意する。
決意は確かに大事。(たぶん)
「大切なのは私の気持ちが変わったこと」(確かに)
こんな思い込みも大事なのかとも思うが
このサビーヌがなかなか個性的というか自己中心的。
なりふり構わずとにかく押しまくる。
これではうまくいくものも~と思ったりもするが、その行動力が少しうらやましくもあったりする。

親友のクラリスは従兄弟で弁護士のエドモンを紹介したり
サビーヌの愚痴や激しい喜怒哀楽もサラッと受け流せるのは
既婚者の余裕なのか、魅力的。
医師の妻で自由に芸術の仕事ができているクラリスはサビーヌの眼にも憧れがある。
すごい美人だし。

結局はまるでサビーヌの自己完結のように物事は終わっていくが、妙にサッパリしていて何だか憎めない。
次は少しは引いて見せてね、と言いたくなる。
帰りの電車では清々しく微笑む。
深刻さはなく、登場人物のありのままの姿を美しい風景の中に織り込む情景描写にこなれたロメールのシナリオを感じさせる。

“人は皆、空想にふけり、夢を追う”

2022レビュー#3
2021鑑賞No.458
空海花

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