優しいアロエ

TOKYO!の優しいアロエのレビュー・感想・評価

TOKYO!(2008年製作の映画)
4.0
〈イスとゴジラとヒキコモリ〉

 海外監督の目を通した歪なTOKYO像の三連打。

①『インテリア・デザイン』

 「町山智浩のアメリカの今を知るTV」でおなじみ藤谷文子が出演するのは、このミシェル・ゴンドリー作品。藤谷文子を映画内でお目にかかる貴重な機会であり、上京間もない貧乏カップルを追った物語なのだが、突然シュールレアリスム的なカーブを遂げるのが面白い。東京は夢追う者だけが集まる街か?いや、そんなことはない。

②『メルド』

 続いては、人の手で裁けるサイズのゴジラが暴れまわるレオス・カラックスの作品。ドニ・ラヴァンがポンヌフの勢いそのまま東京まで走ってきたような作品だが、髪も髭も一層汚らしくてよろしい。謎の言語を話すので通訳を二人介するのが個人的なツボだった。このカラックス作品が3人のなかで一番ふざけている。

③『シェイキング東京』

 フランス人監督が二人続いたところで大トリを務めるのが、いまやセカイのポン・ジュノである。ハリウッドでは好き放題やっていたポン・ジュノだが、意外にも本作では落ち着いている。さすが日本のジメッとした空気感をよく掴んでいるし、スクランブル交差点や車道の立体交差、下町のゴミ屋敷など、TOKYO案内にも気配りが見られる。

 というか、このポン・ジュノ作品がずば抜けて面白い。ディテールに富んだ引きこもりの生態がつまらないわけもなかったが、なにより目を見張るのは、海外監督のフィルターを媒介したときに生じがちな歪な雰囲気が香川照之や蒼井優ら役者陣に一切ないことだろう。これはポン・ジュノが邦画愛好家であること以上に、似たような空気を共有する隣国だからこそのはず。『パラサイト』の絵コンテのような瞬間にも溢れている。
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