HK

サハラ戦車隊のHKのレビュー・感想・評価

サハラ戦車隊(1943年製作の映画)
3.7
1942年の北アフリカ戦線が舞台ですが、翌年の1943年製作ですから戦争真っ只中に現在進行形で戦争映画を撮っているわけで、余裕というかお構いなしというか・・・。
しかし、いわゆる国策映画と片付けるにはもったいない興味深い要素が多々ありました。
アカデミー賞も3部門ノミネートされています。

原題は“Sahara”。戦車がたくさん出るわけではなく、登場するのは実質たったの1輌。
本隊から逸れた米軍戦車が、撤退の命を受けつつ逃げ遅れた英軍や伊・独軍の捕虜を拾って乗り合いバス状態でサハラ砂漠を走ります。
しかし、砂漠の過酷な環境下、敵襲はもちろん砂嵐や水不足に悩まされ・・・

戦車長は全盛期のハンフリー・ボガード。同時期の代表作『マルタの鷹』や『カサブランカ』も戦時中に作られていたことに今さらながら気づきました。

戦車は砲塔に37mm砲、車体に75mm砲を搭載した独特のデザインのM3中戦車。
大型砲塔のM4中戦車(シャーマン)が量産できるまでのつなぎとして先行生産された戦車とか。
戦時中ですからさすがにレプリカではなく現物が砂漠をバリバリ走ります。

1輌の戦車にアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スーダンの軍人が呉越同舟という設定が面白く、当時の世界情勢の縮図のようにも見えます。
同じ枢軸側でありながら独と伊の扱いの違いや黒人差別にも触れているところが戦時中のリアルタイム作品だけに興味をそそられます。

ドイツ軍は当時は現役の悪役ですがら仕方ないとしても、このステレオタイプのドイツ軍の描き方は一部の作品を除き今も続いていますね。

敵も味方も水が無いと生きられない同じ人間として描きながら、戦場での愛国心と自己犠牲は尊いものだというメッセージが同居するところが戦時中に製作された作品ならではのテイストでしょうか。
HK

HK