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モンテーニュ通りのカフェのakrutmのレビュー・感想・評価

モンテーニュ通りのカフェ(2006年製作の映画)
4.5
パリ・モンテーニュ通りを舞台に、「カフェ・ド・テアトル」でウエイトレスとして働く若い女性ジェシカとの交流を織り交ぜながら、ピアニスト、女優、アートコレクターなどの芸術家やその裏方たちの人生を群像劇として描いた、ダニエル・トンプソン監督による映画。ストーリー的にひねりはないが、実力派俳優たちの演技に裏打ちされた様々な人々の生き方や恋愛模様の描写を通じて、とても温かい気持ちになれるハートフル・ロマンである。

ジェシカの祖母役のシュザンヌ・フロンが撮影終了から数週間後に亡くなるという、彼女にとっては本作が遺作となった。彼女の出演作としては、クロード・シャブロル監督の『悪の華』がとても印象に残っているが、本作でも短い出演ながら、彼女の台詞から映画が始まり、彼女の言葉で映画が終わるという印象的な役割を果たしている。特に、最後の「恐れずに前に一歩踏み出すことが大切よ。それで私の人生は輝いたのよ。」という言葉が、台詞であるとともに、彼女自身の言葉でもあるように聞こえ、胸が熱くなる。

モンテーニュ通りの一角に実際に存在するシャンゼリゼ劇場、コメディ・デ・シャンゼリゼ劇場、オークション会場、ホテル・プラザ・アテネが舞台となっていることもあって、それらの施設に因んで、ピアニスト、女優、アートコレクター、劇場の裏方などの人物が描かれている。映像もそこら辺の景色が頻繁に映るので、パリ好きにはたまらない。この映画がとても良いのは、登場人物やそれらを演じる俳優たちがとても輝いている点である。まずは、主人公のジェシカを演じているセシル・ドゥ・フランス。生き生きとした太陽のようなキャラによく似合っている。ピアニストのアルベール・デュポンテル、女優のヴァレリー・ルメルシェ、アートコレクターのクロード・ブラッスール、劇場管理人のダニなど、皆が印象的である。他にも、ピアニストの妻を演じるラウラ・モランテやアートコレクターの愛人役のアンヌリーズ・エスムなども素敵である。また、アートコレクターの息子を演じているのは、ダニエル・トンプソン監督の息子のクリストファー・トンプソンである。
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