レインウォッチャー

プレタポルテのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

プレタポルテ(1994年製作の映画)
3.5
はいからさんも転ぶ。

パリ・プレタポルテ・コレクション、略してパリコレ。
デザイナーにモデルに雑誌・TV関係者などなど、ファッション界の人々でパリは沸き立つ。その内幕で展開される人間模様の多様さは、ランウェイを往き来するコレクションに引けを取らない。

ロバート・アルトマン作品らしい群像劇スタイルの一作で、ファッション業界版『ナッシュヴィル』のようにも思える。たくさんの登場人物たちがまるで電子のダンスのように行きつ離れつ、しかし最後には約束の地(=ナッシュヴィルならコンサート会場、本作ならファッションショー)に集結するという流れも近い。
ただ、語り口はもっと軽く、はっきりとコメディタッチ。同じく「業界の裏側」ものだった『ザ・プレイヤー』よろしく、ファッション界への皮肉・毒も大いにまぶされてはいるものの、どちらかといえば素直にたのしい!類じゃあないだろうか。映画界に比べれば、ビジター感が強いということなのかも。

外からは文化人やゲージュツ家らしく見える業界人も、一皮剥けば恋愛や金や見栄や…といった俗っぽいあれこれに足を取られ額をぶつけ、右往左往の一喜一憂。そんな阿呆らしさを見ていると、表の華やかなランウェイも乱痴気なパレードに見えてくる。事実、アルトマン氏は「こりゃサーカスだ」と言ったとかなんとか。

そして「ふざけるなら本気」なのがやっぱり偉いところで、今作もまた『ザ・プレイヤー』『ショート・カッツ』に負けず劣らずスター俳優のバーゲンセール状態なのに加えて、ファッション業界の「ホンモノ」たちも数多く顔を見せる。
ソニア・リキエルやジャン・ポール・ゴルチェといった名匠が本人役で出演するほか、劇中の登場人物(役者が演じるデザイナー)がプロデュースするショーを実在のデザイナーが手がけていたりする。中でも、ヴィヴィアン・ウェストウッドのコレクションが見られたのは嬉しいサプライズだった。

ラストの着地はある意味でベタともいえるし、見方によっては門外漢のアメリカ人が好き勝手ディスっているようなのに、これだけ本場の業界人が協力してくれるなんてパリの懐は深いんだなあと感心しきり。
本作は最後に「服に何を求めるか」という問いを立てるけれど、彼らもまたそんなことは解ったうえで日々戦っているということなのかもしれない。

相変わらず奇怪な演出も目白押しだけれど、とりあえず開幕で度肝を抜かれる。ミシェル・ルグランの疾走するジャズに乗って、モスクワからパリまで文字通り映像が「飛ぶ」!
あとは必殺「フォレスト・ウィテカー・チェ・ゲバラ残心」とか。何を言ってるかわからないと思うけれど、わたしもわからない。