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キツツキと雨のtheocatsのレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
3.0
ネタバレ
弱いバランスを維持しまずまずの娯楽性獲得

視聴するきっかけは本作品監督の別作品レビューにてなぜか本作品がぼろくそにけなされていたこと。その別作品に関しては私自身も低評価としたが、本作品がけなされる理由も見てやろうじゃないかと。
結果的には期待値ゼロだったのが準備状態として良く作用したようだ。


岐阜山間地にてロケ。

山林での林業に携わる役所広司。そこにゾンビ映画撮影隊が闖入し、チェーンソーの音がうるさいから作業を止めてくれと図々しいお願い。
さらにロケ地探しにまで駆り出されゾンビエキストラまでさせられ徐々に怒る役所広司。何もしない若い人間:小栗旬に八つ当たりをしうっぷんを晴らす。
しかし、彼こそが現場を仕切る監督。ではあるがまるで自分の仕事に自信が持てず逃亡を企てるほど。
そんな自身のない若い映画監督と、なぜか撮影補助隊として協力を深め、地元人間エキストラの統括者となってしまった林業者:役所広司との交流を通し、それぞれの心理的変化と人間的成長を描いた物語。


兎に角ペースがまったり過剰にスロー。いつもならここでイラつくのだが期待値ゼロだから全然平気。「まぁ邦画はスローすぎて中味ないの多いからね・・」

それにしても映画撮影隊がやたら図々しいが、テレビ撮影隊との仕事経験が何度かあるので、まぁあんなもんだよねと違和感なし。

竹槍隊女子のエキストラ人数が少ないことを慮った役所が地元猟友会婦人部参加を依頼する場面から映画にポジティブな風が吹き始める。
竹槍訓練場面でなぜかカメラ監督:嶋田久作が意気に感じレール撮影を提案。嶋田さんがカメラ監督という設定が意外すぎると共に微妙にはまっていたのも好ポイント。

さらに地元民総出のゾンビエキストラ野外撮影では撮影陣が「ゾンビは走らない!」と言いながら笑っていたが、こちらまで楽しくなってしまった。笑

そこに、役所家の法事場面を挟み、定職を持たない息子をからかう親戚に怒る役所、それに対し神妙な顔をする息子:高良健吾という描写も重要。

撮影の方も重鎮俳優:山崎努登場で小栗監督も緊張Max。痛む痔をかばいながら何度かとちる山崎。上手くいったテイクにこれでOKかと思いきや、納得できずおずおずと山崎に撮り直しを要求する小栗監督。
その夜、山崎に酒の席に呼ばれ恐縮しまくる小栗だが、「また仕事に呼んでくれ」と望外の握手を求められ涙を流す。この場面は先の撮影シーンからだけでは飛躍し過ぎの様な気がしないでもなかったが、それだけの深いエピソードだったのだろうと推測。こちらもちょっと感情が動いた場面。

そしていよいよクライマックス。役所と地元民総出のクランクアップ撮影。しかし無情の豪雨。撮影隊は雨の中でも続行しようというが、小栗監督のイメージはそれを許さない。そこに役所広司が「雨は止む」とそっと告げる・・・・

・・・・

今度は海での別の撮影となった小栗チーム。そして役所は元の林業へ。という絵でEND


視聴感は破綻しそうな微弱なバランスを最後まで崩さず、ほのぼのと盛り上げ、クライマックスの豪雨にはこちらが「一体どうなるのか?」とちょっと案じさせられてしまうほどに感情移入。総体的に結構楽しめた娯楽作品と言わざるを得ません。
過剰なスローテンポも結局は適合していたということになっちゃうね。笑


総評三ツ星



実際はあんな自信なさげなのに25歳で嶋田久作の様なベテランカメラ監督(笑)を従えて、山崎努のごとき大御所がキャストの映画監督となることはまずないだろうけれど。

002008
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