こたつむり

ホテル ビーナスのこたつむりのレビュー・感想・評価

ホテル ビーナス(2004年製作の映画)
2.3
♪ この街は止まらない
  たとえキミを強く抱きしめたって

なぜ、日本映画なのに韓国語?
なぜ、ロケ地がウラジオストク?
なぜ、ぼんやりとモノクロ基調?

と、演出の全てに疑問符が浮かぶ作品でした。
小さな部分から大きな部分まで必然性を感じないんです。なので、物語自体にも距離感を抱く始末。気付けば眠気に包まれて、たどり着くのは夢の世界。ぐぅ。

というか。
本作のテーマの中には“やさしさ”が含まれているのですが、製作者は確実に“自分の演出”を押し付けているわけで。「これってオシャレじゃね?」なんて意識が伝わってくるので、物語における“やさしさ”が相殺されちゃうんです。うーん。これは悪手。

しかも、主役は草なぎ剛さん(「なぎ」は弓へんに剪)で、プロデューサーはフジテレビの元社長なんで「あー、これは当時流行っていた“化け物番組”の繋がりなのかなあ」なんて大人の事情も透けて見えました。友情出演で香取慎吾さんも出ていますしね。間違いないと思います。

勿論、商売っ気のある映画も悪くはないです。
ぶっちゃけた話、ディズニーとか、マーベルとか、ハリウッドの映画の根底には、そういう“損得勘定”が流れているでしょう。それを否定したら映画業界が成り立たないですよね。

でも、それならば。
表層をコーティングする技術が大切。
本作で言えば、きちんと脚本を練り込み、薄っぺらさを感じさせないことが重要じゃないでしょうか。

ちなみに仕上げたのはタカハタ秀太監督。
薄っぺらい脚本を分厚くしようとする工夫は伝わってきましたが、本来の筆致(どちらかと言えば、コメディっぽいサスペンスが似合う筆致)とはかけ離れたジャンルゆえに、やはり限界はあったのだと思います。

まあ、そんなわけで。
本作における必然性は、草なぎ剛さん(「なぎ」は弓へんに剪)を引き立てることだけなので、草なぎ剛さん(「なぎ」は弓へんに剪)の成分を楽しむ姿勢が吉だと思います。
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