ペイン

ゴダールの決別のペインのレビュー・感想・評価

ゴダールの決別(1993年製作の映画)
5.0
“リュミエールへの挑戦状”

劇中、とある女性の1人がDVDショップでR・デオダート監督の名作『食人族』(1980)のDVDを買うシーンがあるのだが、『ウィークエンド』(1967)でも終盤に人肉を食べる描写があったので、もしかしたらゴダールはカニバリズムに強い関心を寄せていたのかもしれない…などと少し嬉しく思ったり思わなかったりしながらすでに3回ほど鑑賞。

1回目は通しで観て、2回目以降は一時停止しながら、セリフの1つ1つを吟味して…というのを繰り返しているうちに自分の中に壮大なイメージが膨れ上がりすぎて、もう何をどうレビューしたらよいのかわからなくなってしまったので以下、印象に残った御大の言葉のみを殴り書きしておくことにします。

ともあれ本作は映画にとっては毒にも薬にもなったことのない“安易な共感”よりもずっと豊かなものを与えてくれる逸品であり、私が今までゴダール映画のベストだと思っていた『ウィークエンド』に並ぶ程の愛着を持ってしまった。溝口やタルコフスキーのような叙情的な映像美に乗せ、近年のテレンス・マリック作品にも通ずる語りでもって綴られる以下の言葉をご賞味ください↓



“不安と絶望を少しでも感じることが、この地上に存在できる最良の道”

“人生は石鹸のようだ、少しずつ減っていく。”

“ほかの時代の女性たちの美は、現代の美と異なる”

“我々には、かすかながら贖罪の能力がある。過去がその能力を必要としているのだ”。“過去と我々の世代の間には、密かな約束がある。我々は待ち望まれてこの地上に来た”。

“現代は答えの分かりきった問いを求める時代である”

“会社員は生活のために時間を浪費し、消費者は時間のために生活を浪費する”

“赤裸々な真実を描くと(ある物事を除いて…)”、常に何か薄汚く品のないものに見える。”

“目は見ることに飽きず、耳は聞くことに満足しない”

“先にあったことは、後にもある”

“すべては1人の中に、他者もその中にある。3つの位格(ペルソナ)だ”

“態度は誇り高く、考え方は控え目に”

“人間の最も根源の本能は真実との闘い、つまり現実とだ。”

“真実は子供の口から生まれる”
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