似太郎

赤い鳥逃げた?の似太郎のレビュー・感想・評価

赤い鳥逃げた?(1973年製作の映画)
5.0
【青汁みたいな青春🍀】

和製アメリカン・ニューシネマとして名高い藤田敏八監督の破滅型青春映画。逃亡プロダクション制作。

主演、原田芳雄と大門正明のコンビに若き日の桃井かおりが加わって『突然炎のごとく』『明日に向って撃て!』『冒険者たち』と同じフォーマットで進むロード・ムービー。

東宝配給なのに日活出身の藤田敏八が監督しているので、全編70年代の日活ロマンポルノ臭が濃厚。チーフ助監督が長谷川和彦なので、後半から『太陽を盗んだ男』みたいなやさぐれたアクション映画的な展開に変貌していく。

日活ロマンポルノの特徴として「単なる日常風景の垂れ流し」といった感覚があるのだが、藤田敏八監督にもそういった気質がこの頃まだ残っていたので、そんな日常風景の延長線上にアクション映画的な要素が加味された…という点がユニーク。

ダラダラした若者三人の道行きが『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のように目的を失った者の当て所ない【移動】でしかなく、全編エンタメ性が低くて盛り上がらないのはその為である。非常に70年代的な「残尿感」「ニヒリズム」として機能している辺りが肝心。

ここまで当時らしい負の意識が刷り込まれた青春映画というのも、そうそう見かけない。私のような社会不適合者やアウトサイダー向けに作られたカルト作であり、鳥のように自由に生きたいといったメッセージ性が胸に響く一級の青春映画だと思える。

※樋口康雄(PICO)によるサントラ盤もオススメ。原田芳雄が劇中で歌う『愛情砂漠』が実にやるせない(同時にしょーもない)雰囲気である種のノスタルジーに浸れる一枚。😭
似太郎

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