キャッチ30

フォロウィング 25周年/HDレストア版のキャッチ30のレビュー・感想・評価

4.0
 主人公はビルという男(本名かどうか定かではない)だ。ビルは作家志望であり、創作のヒントを得る為に通りすがりの人々の後をつける行為を繰り返していた。だが、ビルは尾行していた相手の男に気付かれてしまう。その男は「コッブ」と名乗り、他人の部屋に不法侵入し、私生活を覗き見ることに取り憑かれていた。ビルはコッヴと出会ったことにより盗みの味を覚えてしまう。

 数日後、ビルはコッヴと共に侵入した部屋の住人である金髪の女性に興味を抱く。いつものように彼女の尾行を始めたビルは「ダニー・ロイド」と名乗り、彼女に接近する。ビルは金髪の女性から盗みを依頼される。彼女によると自分はマフィアの男から脅迫されており、その脅迫のネタが大金と一緒に金庫に入っているとうのだ。ビルは彼女のために承諾し、コッブの模倣をして盗みに入ろうとする……。

 「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というのはニーチェの格言だが、コッブもまたビルを尾行していた。コッブは洗練された話術で言葉巧みにビルを操っていく。そうとは知らないビルはコッブと共に盗みに入っていく内に自分から盗みを働くようになる。

 ノーランは観客に目配せをする。片方だけのピアス、クレジットカード、ハンマーといったアイテムによって伏線を張り巡らせている。
 また、長編デビュー作である今作は後続の作品に繋がるエッセンスが詰まっている。異なる時間軸の同時進行はもちろん、金庫破りのシークエンスは『インセプション』、金髪の女性とマフィアの男の関係は『TENET』に受け継がれている。『TENET』のエリザベス・デビッキと今作のヒロインが似ているのは何かの偶然だろうか。