ヤマト

ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストアのヤマトのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

【 扉がある自由 】
 中国のラストエンペラー、愛新覚羅溥儀の運命を味わえる名作であり愛すべき作品である。とにかくジョン・ローンがカッコいいのだ。
 選ばれし皇帝は、思うがままに人を動かし、思うがままに日常を送ることができる。自らの一声で、身の回りのことは完結する。
 しかし不自由なのだ。選ばれし者ゆえに、伝統には縛られて掟を背くことは許されないのだ。一族は従えても運命に抗うことはできなかったのだ。例えば、紫禁城から出ることは許されないというものが挙げられる。
 これこそが本作でこそ味わえる感情である。この言葉にならない“もどかしさ”たるや筆舌に尽くし難い。確かとある自叙伝にて、「生まれてから訳もわからず、ただ運命に流されてきた」といった文章を目にした記憶があるが、まさにその通りなのだ。
 仕切りに「オープンザドアー」というセリフが口にされる。まさに、自由に聳え立つ壁が実は不自由を表すラストエンペラーの運命の矛盾といえよう。
 好きなシーンがたくさんある。中華の音楽から始まるオープニングクレジット。それから、呆気なく紫禁城を出ることになったシーン。あれはあの音楽があってこそ。あとは、婉容(ジョアン・チェン)が涙を流しながら花を頬張るシーン。日本軍の手のひらの上で踊らされていることを確信しての涙であろう。エンドロールも最高だ。「the end」と表示されて画面が真っさらになるが、その後、坂本龍一さんの音楽のみが流れるのだ。壮大な映像を味わった後は、荘厳な音楽を味わえという演出に思えてならない。最後にして最高のサプライズである。
ヤマト

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