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ラバー、ストーカー、キラーのhasisiのレビュー・感想・評価

3.6
2000年頃。米国のどこか。
デイヴはトラックの整備士をしている。エイミーと結婚し、2人の子供を儲けた。
だが、勤務時間のずれですれ違い、やがて離婚。35才の出来事だった。
地元であるネブラスカ州の都市、オマハに戻った、エイミーと子供たちの近くで暮らすため、デイヴも引っ越し。
知り合いもいない土地での孤独な生活がはじまる。出会い系サイト、プレンティ・オブ・フィッシュ(POF)で寂しさを紛らわすのだが、危険な女性と出会ってしまう。

監督は、サム・ホブキンソン。
2024年にNetflixで公開されたドキュメンタリー映画です。

【主な登場人物】🍻🎱
[エイミー]元妻。
[キャリ]容疑者。
[クリス]オマハの刑事。
[ジム]巡査部長。デンガリー。
[トッド]カウンシル・ブラフス。
[トニー]IT専門家。
[デイヴ]主人公。
[ナンシー]キャリの母。
[ブレンダ]地方検事代理。
[マックス]キャリの息子。
[ライアン]捜査官。
[リズ]被害者。

【感想】🚪👁️
イギリス在住の男性で、詳細不明。
1999年にテレビからスタートしたドキュメンタリーの専門家。本作が29作目で、映画だけでも6作目のベテランです。

🖥️〈序盤〉🌒🏡
インタビュー、再現VTR、PCの画面を使った構成が『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』によく似ている。
マッチングアプリの普及率を考えると、これから益々増えそうなジャンル。

🔑ネットで出会った女性がサイコ。
POFのアプリが登場したのが2010年なので、出会い系の中心がパソコンだった頃の話。
心理的な恐怖はフィクションに負けず劣らず。他人事ではあるが、現実の話なので、楽しみつつも複雑な気分に。
(残酷)
フィクションと違い、衝動で動く人間の痕跡なので脈略がない。
ドキュメンタリーでしか味わえない恐怖がある。

地下鉄で暴れる人と違い、あまりニュースでも取り上げられない、個人を狙った捨て身の攻撃。
話が通じないので、命を捨てている人ほど恐ろしい相手はいない。
出会い系で性病をうつされた話はよく聞くが、殺し屋が来るのは珍しい。

接し方うんぬんではなく、相手は破壊衝動を満たしたいだけなので、回避できない。

犯人の特徴。
ストーカーでハンタータイプ。よって、責め。狩りを楽しんでいる。
嫉妬からくる怒り。独占欲が強い。

🖥️〈中盤〉👮🏼🤠
エスカレート。
フィクションのように被害規模が拡大するが、犯人の姿が見えなくてミステリアス。
様々な憶測が浮かび、先が気になる作り。
1つの事件で90分押してくるので、情報が小出しにされて内容は薄いが。
溜めが長いので、真相に迫ってゆく興奮はそれなり。

👓雲を掴むような犯人捜し。
IT捜査の具体的な方法など。やっている事は、昔の地取り捜査とあまり変わっていない。
犯人の正体は想定内だが、事件の繋がり方が想定外。
(実話です、がパワーワードすぎる)

答えが提示されて、事件の不可解な部分は腑に落ちた。
同時に、いかにフーダニットが視聴者に対してフェアで、よく出来ているのかが分かる。
1番最初に調べそうな人物を謎にしてあり、縦に繋げてゆけば成立してしまう映像の暴力を感じた。
(この監督、要注意人物だな)

地味な証拠固め。
フィクションだと犯人が分かった段階で怒涛の展開が求められるが、
ドキュメンタリーなので別軸。
捜査の過程が公開されて警察の仕事が見られる。通好みのアドベンチャーゲームのようで面白い。

🖥️〈終盤〉📸🦶🏼
ツイスト。
想定内だけど、一応は変化する。
ただ、犯人が、自分の脳内でしか成立しない理屈を社会に持ち込むので、歯応えに乏しい。
素人への1対1の嫌がらせであれば、毒電波として機能するが、経験豊富な捜査官の前では躍らされるのが落ち。

⌨️クライマックス。
犯人の肉声は俳優の演技を凌駕する。
そこまで積み上げた怨念の歴史が乗るので、伝わってくるものがあった。
命がけのプロジェクトであり、スリラーとしても一級。
話題作りが上手。
ストリーミングで人気が出るためのコツを熟知した職人技だった。

【映画を振り返って】🧑‍⚖️📂
ドキュメンタリーだが、ミステリーのように先が気になり、途中で止められない魅力がある。
捜査の過程が公開されているので学びがある。事件が解決しても、時間を無駄にしたような空しさがなく、充実感が得られた。

2周目は裏で起きている事態を想像し、未来の悲劇を知った状態で進むので、より恐ろしい。

ただ、警察側が本作の方向性を理解し、自主的に台詞を喋っているのが気になった。
「パズルのピースが填まる」とか「反転攻勢」とか、大げさ。盛り上げるための願望を直接的に語られると笑ってしまう。
アメリカ自体が映画であり、国民はみな演者なのかもしれない。

🐶被害者のデイヴが、おさかん。
出会い系を使う、酷い目に会う。自重する。生きている実感がなくて、また出会い系を使う、をくり返す。
「アホだな~」とは思うけど、大らからで、悲惨な状況をあまり感じさせない余裕がある。人間的とも言えるし、頼りになりそうなので、女性にはもてるだろう。
(……あつかいやすい、は好条件が現実なんだよなぁ)

📱マッチングアプリ。
Tinderが日本でも普及すると思っていなかったので、10代の子たちも使っていて驚き。
遊びたい時に手軽に相手を探せるので便利らしい。
3枚のプロフィール写真と自己紹介文から相手の人となりを想像するから、洞察眼が磨かれるのだとか。

Xにも寂しい男性を罠にはめようと誘ってくる女性がちらほらいるので、ネットには危険がいっぱい。
(まあ、命までは取られないか)
デイヴくらい鈍感だと絶望的だけど、破滅願望があるというか。被害者の方々は、自分から底なし沼に填まりに行っているようにも見える。
映画の後も、デイヴが次の事件に巻き込まれていないか心配です。
(棒読み)
火遊びもほどほどに。本人で続編が作られないように祈ります。
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