今まで行ったどこでもないどこかに来た気がするーー。
オートクチュールデザイナー・中里唯馬さんは服の最終地点を自分の目で見届けるためケニアに向かった。
到着したのは、先進国が処理しきれなくなった服が、大量に運びこまれるゴミの山。
ゴミ山で育ち、生計を立てる人々がいる傍ら、これ以上服を作らないでと干ばつに苦しむ民族は言う。
パリコレクション自体が、服を生み出すことに加担しているのではないか。
リサイクルが難しいとされる、質の悪い安価な素材の服から、素晴らしいクリエイションと技術によって生まれたコレクションは、息を呑む美しさだった。美しいから、生まれた背景を想うと涙が出た。
言葉で受け取るのではなく、
体験だった。
最近ファッションや、エンターテイメント、さまざまな喜びに、それどころではないんじゃないかと思ってしまう。METガラにしても、素直に楽しめない世界になってしまった。
自分はどう動くのか、他者を想像し、常に行動の裏を考えられる人間でいたい。