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ジャンヌと七面鳥のdm10foreverのレビュー・感想・評価

ジャンヌと七面鳥(2023年製作の映画)
3.7
【柵】

今年も始まりました「My French Film Festival 2024(略してMyFFF2024)」。
長編はひとまず置いておくとして(別料金なので)、短編から攻めてみましょうということで、早速チェック。

一本目は「OASIS」という短編ドキュメンタリーを観たんですが、案の定Filmarksにはまだタイトルが登録されていないので、レビューはとりあえずタブレットに下書きを残しておくとして、先にこちらのレビューから始めたいと思います(何だかんだでFilmarksに登録される順番もメチャクチャなので、観た順とレビューの順番は大幅に変わりそうです)。

っていうところで、今作。
一言で言うと、これは前半と後半でちょっと物語のテイストが変わってくる不思議なお話でしたね~。
最初は、よくある「思春期のイマジナリーフレンド系」の、ちょっとイタい青春ものみたいな作品なのかな?って思ってたんですが、実はジャンヌがずっと向き合っていたのは・・・っていうお話。

思春期真っただ中の主人公ジャンヌが、学校や家の中で「自分の居場所」や「なりたい自分」「本当の自分」について悩みながら、それでも確実に自分に近づいている「少女から女性への階段」をどう受け入れるべきかについて向き合う姿を描く今作。

そんな彼女の唯一の友達は家で飼っている七面鳥。
彼とは日頃の出来事や何気ない悩み、相談をする、そんな間柄だった。

ある日、学校で他の子よりも大人っぽい一人のクラスメートが気になり始めるジャンヌ。
(もうこんな町、早く出たいわ・・・)
ウンザリ顔でボヤく女の子。
ジャンヌはその子が持つ「大人っぽさ」や「女っぽさ」が気になってしまい、ついつい動揺してしまう。
家に帰っていつものように七面鳥に話しかけられても上の空で会話も全く弾まない・・・。

ここまでの描き方で思ったのは、あくまでも七面鳥はジャンヌにとっての「イマジナリーフレンド」のような存在で、ジャンヌ自身の精神状態がそれを追い越してしまった時、いつしか「それ」は必要なくなっていくんだろうな・・・・という感じだったんですね。
あくまでも、七面鳥は「ジャンヌが子供であるうちの遊び場の一つ」として存在していただけの、いわゆる「甘酸っぱくてちょっぴりホロ苦い青春の1ページ」、そんな感じのお話なのかな・・・・と。

でも中盤あたりから後半にかけて、七面鳥の言動にある変化が現れ始めます。
ジャンヌが求める求めないに関わらず、自発的に彼女の行動や思想を束縛し始めるようになるんですね。

(あなたはそのままがいい。脱毛なんて止めるんだ)

大人っぽい女の子に触発され自分で眉毛を整えようとするジャンヌの体をコントロールして阻止しようとする七面鳥とそれに抗うジャンヌ。
無理やり顔に毛抜きを向けたジャンヌは勢い余って顔に傷を付けてしまう。
ここで七面鳥の正体(存在意義)は「単なるイマジナリーフレンドではない」という事に気が付くわけです。

現実的なテーマでもありながら、そこに「ファンタジー」のテイストを重ねることで、客観的にジャンヌの「孤独」や「焦り」のようなものも伝わってきて、ある意味では確かに「イタい青春もの」ではあるんだけど、最後の方はちょっと真っすぐ過ぎる向き合い方に「怖さ」すらも滲んできて、(あれ?これホラーだっけ?)っていう場面すらある。
徐々に「イマジナリーフレンド」だと思っていた七面鳥と意見が対立しだし、ついにジャンヌは・・・。

もしかすると七面鳥は「もう一人のジャンヌ」だったの出はないだろうか?

(この柵から逃げ出したい)

それは「この狭いコミュニティから外に出たい」という意味と「早く大人になりたい」というジャンヌの内なる感情の現れだったのではないだろうか。

ジャンヌの取った行動は一つの選択ではあったけど、彼女は自分の中にいる「もう一人の自分」と対峙し、そこを乗り越えて「大人への一歩」を歩み出したのかもしれない。

ちょっぴりシュールなオチとも言えるので、これを「フランスっぽい」と安直に表現してしまって良いのかはわからないけど、ジャンヌの最後の表情を観れば彼女の中で何かが変わったんだな・・・っていうことが伝わってくるような気がしました。
ちょっとホラーテイストもあったりして、結構好きな作品でした。
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