みむさん

デビルズ・バスのみむさんのレビュー・感想・評価

デビルズ・バス(2024年製作の映画)
4.0
ベルリン国際映画祭にて。

「グッドナイト・マミー」監督コンビ、今回もウルリヒ・サイドルのプロデュース(共同監督のヴェロニカ・フランツはウルリヒ・サイドルの妻)。その組み合わせに期待するものがきっちりあった。

グロテスクな映像はあるが明らさまなホラーではなくずっと漂う陰鬱で抑圧的な雰囲気に死の匂い、ベースは18世紀のオーストリアの意外と真面目な歴史物で面白かった。
とはいうものの、絶妙なショットで画力バッチリ、不穏さや恐怖を煽るサウンドデザインは完全にホラーだった。

農民の女性たちが長き伝統や静かな抑圧から脱出するために取った究極的な行動の話。
女性(特に妻)には選択肢はなく、働き者で善き妻を求められ、結婚生活は希望がなく気が重くなることばかり。長きに渡りしきたりや慣習を引き継ぎ、それが完璧ではないと厳しい目を向けられるのは現代にもある嫁姑問題に似たものを感じる。

そんな抑圧された女性たちが取った行動は……

圧力に屈せず自分の人生を歩むことができない、選択肢のない時代の絶望的な環境、究極の選択をとるために残酷な巻き添えを食らう人もいる。絶望的すぎる話。

現実逃避なくこうするしかなかった女性たちが数多くいたという重たい歴史。

神はいないのか?と思うが、いるからこそこの選択を取るのがさらに絶望的。
絶望的なシーンの後も胸糞で陰鬱な気持ちになる。

救いがない。