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ボビ・ワイン:ゲットー・プレジデントのプレコップのレビュー・感想・評価

4.3
ウガンダ国民を暴力で抑圧する長期政権と闘う、歌手で政治家のボビ・ワインを追うドキュメンタリー。第96回アカデミー長編ドキュメンタリー賞のノミネート作品。

ボビ・ワインは抑圧され、苦しんでいたウガンダ国民の代弁者として曲を書いて発表していた。そして、若者から支持を得るようになっていったボビは歌で闘う政治家になる。

以下、ドキュメンタリーの中で強く印象に残ったところ。
・ボビ・ワインによるムセベニ政権評
ムセベニ大統領は1980年代、ウガンダを支配していた独裁政権を転覆させた革命家であった。それを認めた上でボビは権力は必ず腐敗するものとし、ボビ自身が権力を持った時にも例外ではないと考えている。それを踏まえて国民を主人公にする必要があると訴えるところが素晴らしかった。

・スマホ時代の映像素材の豊富さ
もちろん、ウガンダでもスマートフォンは普及していて、非道な抑圧は全て記録されている。それは直接的な人権攻撃だけでなく、軍や警察の人間の葛藤やムセベニ大統領の時代遅れな思想も全てが記録され、発信されている。だからこそ、ボビには自分から発信する言葉に慎重さと、パフォーマンスの大胆さを両立させる力強さがあり、それを感じ取れる。


Disney+で日本語字幕付きで本作を観られるが、日本ではまだ配信されていない。経済状況や安全の程度は違えど、民主主義の崩壊に片足を突っ込んでいる状態の日本にとってもウガンダの状況は全く他人事ではない。また、国際的な経済援助についても重要な発言をしている。アカデミー賞を機に日本でも早く配信開始されることを期待する。
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