これまで観たポーランド映画の中で、強く印象に残っているうちのひとつ。まさか日本で公開されるとは思っていなかったが、ぜひ多くの人の目に触れるといいなと思う。
ヒトラーはじめナチドイツは、金髪碧眼のアーリア人こそが至高の存在であると豪語し、女性=アーリア人の血統を増殖させるための存在と捉えた。
ユダヤ人のフィリップが、ドイツ人の女とセックスする。もしナチが上述のような女性観を持った組織でなかったとしたら、フィリップのことをセックスでドイツ女を支配したつもりになり、ナチドイツに対して復讐したつもりになっている、悪辣で独りよがりな人間としか捉えられない。しかしナチドイツがいかに人種に執着したかを考えると、これは彼が他人の手を借りずひとりで成し得る復讐だったのかと思えてもくる。
これを観て以降、同時代のドイツはじめヨーロッパの歴史やそれに関連する作品を見聞きしていると、しばしばフィリップの面影を見るときがある。