一夜の物語に一生のバックボーンを重ねつつ、純粋に恐くて"息もできない"シチュエーションスリラー。
"気まずさ"を描くシュールな映画を望むと少し落胆するかもだが、鋭気ある製作陣の手によって何百回と擦られた状況を面白く魅せる。新鮮さと、新鮮さの無さのバランス。
正直、予告編から想像するほどの目新しさは少ないかもしれない。ここでネガなポイントを全部言い切ってっておくと、74分であっても"引き伸ばした感"があるほど物語の展開はゆっくりだし、キャラクター性的にもしつこい。ただそのねちっこさって韓国ノワール的だなと思うし、この観てて不快にすらなる雰囲気はヤン・イクチュンにこそ為せる技なのかなと思った。それでいて、とことん殺しに行く。
お互い身体のどこかにアウェーを抱える中での戦慄の対峙。過去の因縁やそれぞれの倫理観はあれど、一時の気の狂いで結局互いの根底には"殺意"vs"殺意"しかなくてウケる。
原作の設定に加えて"言語"による障害を生み出したのもなかなか効いていた。
奈緒は去年の「#マンホール」に続いて出演のあまりにも少ない役だったがもうそのミステリアスさが板につきつつある。
ホルモンを聴いて映画を終えるっていうのも新しい体験だったけど、これが観客にどう刺さるのかも楽しみだなぁ...